トップページ朝の読書ホームページ
「朝の読書」のすすめ
臨床心理学者 河合 隼雄 (かわい はやお)
 読書は実に大切である。最近のIT革命により、人間は自分の欲する情報は簡単に得られるようになった。ところがそれは「報」だけで「情」が抜けてしまうことが多い。
それに比して、読書は書き手の「情」も込みで、生き方全体が伝わってくるよさがある。そして、読み手も自分の好みに応じて、早く読んだり遅く読んだり、自分の主体をそこにかかわらせることができる。

 「朝の読書」を考え出した人は実に素晴らしい。読書は大切だが時間がない、などと言う人に、「十分間でも大いに意味がある」とはっきりとわからせることになったからである。わずか十分間の読書によって、子どもたちは自ら考え、自ら感じ、そして自分の読書時間をさらに増やしてゆくのである。

 子ども自らが読む本を選べるのもいい。十分間という枠だけ与え、そのなかで子どもは自由や自主性を体験するのである。人間は感動したり、感心したりしたことは確かに話したくなるものだ。十分間の読書は、子どもたちお互いの間の、そして、子どもと大人の間の意味深い対話に発展しているはずである。

 切り売りの知識や、外から押しつけられたものはすぐ消え去ってしまう。しかし、自らの力で獲得したものは長く残り、その人の人格形成に大いに役立つのである。この運動のさらなる発展に期待している。


Copyright©2000 TOHAN CORPORATION