いしかわさんが「あとがき」に書かれているので、繰り返しになるかもしれませんが、私はこの本の三人目の担当者です。名作『漫画の時間』から何年かがたち、最初の担当者も、次の担当者も転職。私は手をあげて、三番目の担当にしてもらいました。そうこうしているうちに、自分も転職することになり、いったんはどこの出版社で出るのかは、白紙になりました。
転職のご挨拶に、いしかわさんのところに伺ったとき、「もう、だいぶできているんだけど、読む?」そう聞かれました。「はい、ぜひに」。そして、会社をやめる段になって、はじめて、この膨大な原稿を、読むことができました。あまりに面白くて、あっという間に読了。この国にはこんなにたくさんの漫画があって、私たちは、アクセスしようとすれば、その漫画に触れることができる、出会うことができる。なんとも幸せな気分になったのを覚えています。
最終的に、ご縁が実って、この本の誕生に居合わせることができました。もくじだけで、一二ページ、見出しは二〇〇本、索引もつけました。校正に時間がかかると覚悟して、読み始めるのですが、予定よりも毎回はやくあがります。毎回するすると引き込まれ、読まされてしまう。マニアな漫画の読み方もデータの豊富さも、この圧倒的な文章力、文体の確かさが支えているから、どんな人にも伝わるんですね、きっと。面白い漫画評論は面白いし、やっぱり売れます(二〇〇八年二月一八日現在三刷)。
一月二六日に新宿の朝日カルチャーセンターで、『漫画ノート』の刊行を記念した、いしかわさんの講演会がありました。これだけのネタをA5判四百ページに詰め込んだのだから、もう話すことはそんなにはないだろうと思っていたのですが、でるわでるわ、江口寿史さんの話も、岡崎京子さんの話も、まだまだ無尽蔵。予想を上回るネタと知識に、またまたびっくりしてしまいました。いしかわさん、次の本は、もう一二年も待たせないでくださいね。
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