「14歳の世渡り術」。企画段階、このシリーズ名は大反対を受けた。「中学生に世渡りなんて早すぎる」「リアリティーがない」などなど。14歳という年齢に世渡りというミスマッチさが心配されたようだ。
しかし中学生も世渡りなしで生きられない。確信があった。中学生に行ったアンケートで「将来なりたいものは?」という質問の答えを見たからだ。
「14歳の世渡り術」は、河出書房新社初のYA本格参入シリーズだ。それだけに彼らの興味がどこにあるのか見当がつかなかった。しかし将来を訊いた質問には、予想以上に中学生の現実が浮き彫りになっていた。
「サッカー選手」「医者」「美容師」など職業を答える人もいたが、「空気の読める人」「面白い話ができる人」「いじめられずに卒業したい」など、いま抱えているストレスの解消や身近な恐怖を「将来」とする回答もかなりあったのだ。遠い未来に思いを巡らす暇もないくらい、目の前の敵との闘いに明け暮れている。ならば、「外」に興味を持つのは難しい。引きこもり、ニートも当然の選択肢だと思えた。
中学生に世渡りなんて早すぎる。ずるい。この回答を知る前だったら頷いただろう。しかし現実は思ったより厳しい。だったらまず目の前の問題を「世渡り」する手段を提供しよう。そこを乗り越えれば、遠くを見渡す余裕が生まれるはずだ。その思いが今シリーズとなった。
ラインナップはすべて、著者の体験や実践方法から学ぶ構成。『右翼と左翼はどうちがう?』は著者の右翼、左翼活動を通じて社会に疑問を持つ方法が学べ、『「占い脳」でかしこく生きる』は、占いを思考のひとつとして使う方法を身につけた上で、偏った考え方に陥る怖さを教えてくれる。『民族の壁どついたる!』は、にがい歴史も知った上で世界の人と手をつなぎ合う方法を伝えている。
世渡り、実践、という武器を手に入れて、世界に向き合う怖さが少しでも減れば、またその助けとなるシリーズになれば、と思っている。
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