「朝の読書」の現場から

朝の読書と「すくど」が育む生徒の未来清教学園中・高等学校

▲清教学園中・高等学校の「朝の読書」風景

清教学園中・高等学校は,大阪府の南部の河内長野市,金剛山の麓の緑に囲まれた,中高一貫の私立学校です。1951年に中学校が開校し,以来「一人ひとりの賜物をいかす」をスクールモットーとしたキリスト教主義の教育を続け,2011年には開校60周年を迎えました。
生徒たちにとって朝の読書は心を静め一日をはじめるよい機会です。学園の毎日は,10分の読書・讃美歌・聖書朗読・お祈りではじまります。朝の読書実践の歴史は1995年にさかのぼり今年で20年目を迎えます。

さて,今回報告させていただいた,朝の読書活性化の試みのキーワードが「すくど」です。「すくど」とは聞き慣れない言葉ですが,学園のある南河内地方では,「焚きつけ用の松の枯葉」のことを「すくど」と呼んでいます。ガスが普及する以前,かまどの焚きつけには,油分の多い「すくど」が重宝されていました。
終戦直後のことです。清教学園の前身である河内長野教会「清教塾」の中学生たちは,「自分の学校を創ろう」という志を立て,活動をはじめました。そこで注目したのが当時必需品であった「すくど」だったのです。かれらは「落ち葉かき」ならぬ,「すくどかき」をして俵に詰めて売りました。その売り上げが,学校設立のための最初の献金となったのです。
こうして生まれたのが清教学園です。私もまたこの学校の卒業生なのですが,学園草創期のこのエピソードから,学校図書館の中学新入生向けの本棚を「すくど文庫」と名付けました。新入生に,本の世界に分け入るきっかけとなるよう,また,よく生きよう・学ぼうとする心の炎の「焚きつけ」となるよう,願いを込めて命名したというわけです。

この「すくど文庫」からは年間約4000冊の貸出があります。またそこから選んだ本を学級文庫にした「すくどの本」では年間約3000冊の読書が記録されおり,朝の読書の活性化に結びついています。その一方で,中学の総合学習の授業から,「おためし読書」という試みも報告させていただきました。「すくど文庫」から選ばれた本を生徒たちが実際に手にとって読んで回して評価を残す,という授業です。ここで得られたデータはコンピュータに入力されてまとめられ「どんな本が,だれを,どれくらい惹きつけるのか」が示されました。具体的には「中学生をつかむ本ランキング」が生まれています。こうした授業方法やデータは公開していますので,ご希望があれば提供させていただいています。

学校図書館を活用した読書支援,また総合学習における探究的な学習を通じ,貸出冊数は全校でここ数年4万冊を上回っています。中学生ひとりの貸出しも年50冊を超えるようになりました。今後とも清教学園中・高等学校では,多様な賜物を持つ生徒と,多様な本の世界が幸せな出会いができるよう工夫を続け,朝の読書の活動が一層豊かになるよう努力させていただきたいと思っております。(書店経営2016年2月号掲載)

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