「朝の読書」の現場から

「ことばの力」を育む横手市立横手南中学校

▲横手市立横手南中学校の「朝の読書」風景

 横手市立横手南中学校は、西に「出羽富士」鳥海山を、東に奥羽山脈を望む横手市の中心部、郷士館の丘にその学舎があります。石坂洋次郎『山と川のある町』の舞台となった街でもあり、四季折々の豊かな自然に囲まれた中で生徒たちは活気に満ちた学校生活を送っています。

 「生徒に落ち着いた学校生活を送らせたい」という、当時の校長先生の強い思いからその歩みが始まった本校の朝の読書は、今年で16年目を迎えます。開始当初から様々な試行錯誤を重ね、本と向き合い、本を通して自分との対話をする習慣が徐々に根付いていきました。現在では、8時5分の予鈴が鳴るころには席に着き、すでにページをめくっている生徒が見られます。8時10分、始業のチャイムが鳴るころには全員が着席し、学級担任も同じ空間で本を読み始め、8時25分までの15分間それぞれが本の世界にどっぷり浸かって、「ことば」を、そして心を豊かにしています。

 その一歩目を踏み出した時から取組は様々な広がりを生み出し、現在に至っています。横手市ではすべての小中学校に学校司書を配置し、書架整理・整備をはじめ、学校図書館に足を運びやすい環境づくりが行われています。館内における新刊・話題の本紹介のほか、校長室前の廊下には月毎にテーマを設けて、本に関する情報を発信して、多くの生徒が図書館に行きたくなるような環境が整備されています。また、毎週水曜日は通常昼に行っている清掃を朝行い、昼休みを長く取る「南中シエスタ」を設定し、図書館で「ビブリオ(書評)バトル」をはじめとした様々なイベントを行っています。これにより、多くの生徒が図書館に足を運んで本にふれる機会を生み出しているほか、吹奏楽部のミニコンサートを開催し、好評を博しています。これらは、生徒会の図書委員会が主導する活動であり、さまざまな工夫を重ねて年を追うごとに充実してきています。中でも、朝の読書を通して心に残った言葉を書きとめ、生徒・職員分をまとめた文集「心に残る言葉」の発行は大きな取組のひとつといえます。

 多岐にわたる取組が実を結んで、ここ数年生徒の貸し出し利用率は100%近い数値となっており、500名近い全校生徒のほぼ全員が学校図書館の本を利用して朝の読書をはじめとした読書活動に取組んでいます。さらに、昨年度からは市内の全小中学校を挙げて、新聞活用にも力を入れています。本校では日刊・週刊を合わせて7紙を購読し、生徒が世の中で起こっていることに目を向ける複数の取組を行っています。

 このように、本校が「読書活動の推進や新聞活用」に積極的に取組んでいるのは、心の豊かさや将来にわたって物事を考えるための基盤となるのが「ことばの力」であり、その力を育てることが義務教育の中でも重要視されるべきことのひとつである、と捉えているからです。これは、横手市の教育方針でもあり、ここ数年、本校でも「ことばを大切にした学習活動」の充実に取組んできました。今後も、本や新聞に親しむ環境づくりにより一層努め、生徒たちの「ことばの力」を高めていきたいと思っています。

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