▲石川県白山市立松任中学校の「朝の読書」風景
「やった!この本、借りたかったんやって」「あの本、どこですか?」生徒たちは昼休みが始まると大急ぎで図書館にやって来ます。司書に新刊を尋ねる姿。シリーズ本を順番に借りながら「また別のお薦めも教えて」とにっこり笑う姿。友だち同士で「見せて」「おもしろいよ」と本を紹介し合う姿。二十分間の昼休みに約二百名は訪れる──毎日の風景です。
本校は、約八百名の生徒が通学する県内屈指のマンモス校です。平成十七年に近隣の市町村が合併し、松任市から白山市となりました。その中心部に位置しています。全国大会で入賞する等、部活動も盛んですが、「朝顔やつるべとられてもらひ水」で知られる加賀千代女が生まれた土地柄、俳句作りが教育活動に取り入れられており、文化活動も盛んです。学び舎の窓からは霊峰白山を望み、校訓「生き方を学び合おう高め合おう──生徒も先生も保護者も」のもと、創立六十七年の伝統と歴史を感じながら学校生活を送っています。
本校の「朝の読書」は、旧松任市の全中学校に司書が配置された平成九年に始まり、平成二十二年度には全学年で毎朝行う完全実施となりました。それ以降、落ち着いた雰囲気の中で、毎日の学校生活がスタートしています。 六年前にはPTA主催の「ビブリオバトル」が始まりました。保護者、教員、生徒が「この一冊」について語ります。生徒が自主的に運営するビブリオバトルも含めると年四回以上行っていますが、毎回盛況です。また、全教職員による「本の読み語り」は年四回実施しています。先生と生徒が本を介して、人と人として繋がる時間です。昨年度からは「親から子へ 読んでほしいこの一冊」の取り組みもスタートしました。思春期の子どもに面と向かっては言えないけれどこんなことを伝えておきたい──。本の紹介に関連しつつ、親の思いや子どもへのメッセージがあふれています。
昨年度末には前校長が退職記念に「すずかけ文庫」を寄贈してくださいました。「大人へと大きく成長するこの時期に、生きるヒントが詰まったいろいろな本に触れてほしい」という願いがこめられた文庫です。芸術家、実業家、スポーツ選手等、「生き方」をテーマに本を集め、常時別置しています。 図書委員会の活動も活発です。授業に関連する本の紹介POPを書いて校舎のあちこちに展示したり、道徳に関連する本のブックトークを異学年交流で行ったり、スライドを用いて全校集会で◯×クイズも行いました。
このように、本校では、生徒同士、教師と生徒、保護者・地域の方と生徒が繋がり合いながら読書推進が行われていますが、この読書環境は一朝一夕で生まれたものではありません。さまざまな方々のご協力があって、時間をかけて育まれてきたものと感謝しています。生徒たちが読書習慣を身につけ、本校卒業後も、読書を通して心を豊かにし、より良い生き方ができるよう願って、本との出会いに満ちた三年間を支えていきたいと考えています。
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