「朝の読書」の現場から

朝の読書 本と生徒のつなぎ役千葉県立八千代西高等学校

▲千葉県立八千代西高等学校の「朝の読書」風景

 千葉県立八千代西高等学校は、千葉県の北西部下総台地に位置する人口19万人の、緑豊かな八千代市にあります。本校は、昭和55年に設立され、今年で創立39年目を迎えた、全日制普通科男女共学の県立高等学校です。八千代市は、その利便性から「住宅団地発祥の地」として知られ、東葉高速鉄道沿線を中心に宅地開発が進められている地域です。

 学校あげての「朝の読書活動」の取り組みは、平成13年4月から始まり今年で17年目を迎えました。千葉県内の公立高等学校では初めての取り組みで、「落ち着いた学校生活のスタートは朝の読書から」を合言葉に、生徒指導の切り口から始められました。 当初は高校生に対して静かに本を読ませる指導の困難さに、職員一同閉口したと聞いています。また、全生徒同時に本を読ませることに難色を示す職員もいましたが、「全職員で取り組ませること」と、「取り組みの継続性」を重視しスタートしました。

 職員の声で発足した「朝読委員会」は、各学年の担当教員と学校司書で構成され、「朝の読書」運営の中心となり、現在まで続けられています。「朝読委員会」は、学校や生徒の実態に合わせて毎年、実施要項の見直しを図り、全職員の共通認識の下、無理なく継続して取り組めるように活動して参りました。現在では8時35分から10分間、クラッシック音楽をBGMとして流し、担任や副担任も同じ教室の中で、読書を行っています。朝の読書用の本は生徒が自分で用意しますが、学級に本を貸し出し、その入れ替えを年間5回行い、手元に本のない生徒がいつでも読書に取り組める工夫をしています。また、蔵書の充実を図り、話題となった本や、人気の本を紹介するなどの環境作りにも最善を尽くしています。

 最も特徴のある取り組みとしては、教職員が一人1冊ずつ本の紹介文を執筆し、それを図書委員がまとめた『八千代西高の先生おすすめ本50冊』の冊子発行があります。図書館内に本を展示し貸出も可能なこの企画は好評を博し、現在この紹介文を地元の書店や公共図書館に展示する企画が持ち上がっています。学校図書館と書店や公共図書館との協同による新たな読書活動推進の可能性を感じます。授業の導入部分やホームルームで担任が本を紹介する場合もあります。今後は、生徒同士で本を紹介する時間を設定して、更に読書に親しむきっかけを作る予定です。

 また、図書委員会も近隣の保育園、小学校、特別支援学校、高齢者施設等に出向いて「読書交流会」を実施しています。朗読劇など、読み聞かせに留まらない多様な取り組みで、地域と共に本に親しむ機会を増やしています。 現在、多くの高校生がスマートフォン等電子機器を愛用している時代ですが、「活字に触れる醍醐味を、我々学校が率先して生徒に体験させたい」と強く感じています。

 「継続こそ力なり」をモットーに、定着と進化を目指して今後も取り組んで参ります。

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