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〜はじめに〜
 子どもは本来、本が大好きであり、自由な発想で本を選べる天才でもあります。しかし、家庭や学校で本を読む環境がなかったために本と出合う機会が少なかったといえるでしょう。
 読書は豊かな感性と考える力を育み、人生をより深く生きていくために欠かせないもので、基礎教育や学力向上等の教育的効果があると実証されています。『朝の読書』運動は1988年に千葉県の女子高校で提唱され全国の学校に広がりを見せております。導入した学校からは、「子どもたちに落ち着きが出てきた」「遅刻が減少した」「不登校やいじめがなくなった」や「学級崩壊を立て直すことができた」等々、想像を超える効果が報告されています。本誌はこれから『朝の読書』を始めようと考えておられる先生方のためのヒントとして、これまでの実践校の事例等を参考にまとめたものです。貴校のよりよい『朝の読書』活動の一助になれば幸いです。
(朝の読書推進協議会)
   
   
「朝の読書」
 毎朝、ホームルームや授業のはじまる前の10分間、生徒と先生がそれぞれに、自分の好きな本を黙って読む。
毎日やる
みんなでやる
好きな本でよい
ただ読むだけ
 たったこれだけのことなのです。
わずかな時間でも、毎日続けることで読書が好きになり、豊かな心と人格の形成が育まれていきます。
 「朝の読書」は、本を読むきっかけを作る最良の方法ではないでしょうか。
 『朝の読書』導入に関して最大のハードルは、同僚の共通理解が得られないという問題です。まず最初の行動は、読書教育に関心のある同僚と一緒に研究会を開きながら、徐々に仲間を増やしていくことです。自分の担任する学級、あるいは授業の中で実践して、生徒の声をまとめることも肝要です。生徒の声と共に他校の事例・情報収集・見学、など具体的な事例や成果をまとめて学校へ提案することが効果的で、推進委員会等を組織することも重要です。
 『朝の読書』は授業の前に10分間行うことを基本とします。10分間の時間の捻出は、朝と帰りのSHRや清掃の時間を短縮したり、日課の中で微調整をしてみて下さい。教育的な効果の面から「朝学習」を『朝の読書』に切り替えた学校は数多くあります。一番の問題は職員朝会です。生徒だけに読書をさせて先生方は会議という状況は継続につながりません。日報を利用することで会議を短縮したり、時間帯の変更などで必ず生徒と一緒に読書が出来るような環境を整えて下さい。
 基本的に全校一斉で毎朝実施し、大事なことは先生方も教室で一緒に読むことです。次の4原則が基本となります。
(1)みんなでやる (生徒と教師全員が同じ時間に同じ条件で取り組む公平さが基本)
(2)毎日やる   (1日10分という短い時間でも、毎日行うことで生徒の読む力を育む)
(3)好きな本でよい(読む本を子ども自身に選ばせることは自分発見につながり主体性を育む。但し、マンガと雑誌は除く)
(4)ただ読むだけ (感想文や記録は求めない。本を読んでいるときの楽しく充実した思いを大切にする)
※全職員がそれぞれの持ち場で、生徒と同じ条件で一斉に読むことが理想的です。
(1)読む本は原則として生徒自身に用意させて下さい。(学校図書館、公共図書館、自宅、友人から借りる、書店で購入等)
(2)学級文庫を設置することで、生徒の身近に本のある環境をつくって下さい。学級文庫をつくることで、本を準備できなかった生徒への対応や選書の手助けにもなります。
(3)公共図書館との連携を図り、学級文庫の充実を図って下さい。
 『朝の読書』は基本的に生徒の自主性に委ねますが、本を選べない生徒、本を読まない生徒への対応は、読書以外の時間帯に応援する姿勢で声をかけることも必要です。折りにふれ、教師が自分の子ども時代の読書体験等や本の魅力について自分の言葉で語ることも効果があります。遅刻者にはその場で注意をせず、速やかに読書に参加させ、後で指導を行って下さい。私語をしたり物音を立てたりする場合は即座に注意を促す必要があります。
 読む本は自分で用意するとは言っても、子どもたちにも様々な事情もあります。『朝の読書』を良い形で発展させている学校は、例外なく「学級文庫」を設置して常に図書の充実を図っています。学校図書館や公共図書館から集団貸出図書として借り入れ、定期的に学級ごとの入れ替えが効果的です。普段読む本は、児童・生徒の目につくところに展示することが有効で、学校の玄関ロビーや廊下、階段回り等、校舎のいたる所に本や本に関する情報を展示し、日常的に目に触れさせることが関心を高めます。
 現在、学校図書館の蔵書数は国が定める標準蔵書数に6千万冊不足しています。この不足分を補うために国は平成14年度から5ヵ年計画で650億円(年間130億円)の予算措置を行いました。この学校図書館図書整備費は、通常の年間図書予算に上乗せされるものなのですが、地方交付税措置のため、学校が教育委員会や自治体に要請して予算化されないと学校へは配分されません。保護者や地域と連携して自治体に働きかけたり、地元の議員にお願いして、議会請願してもらうことが効果的です。(整備費の目安:小学校1学級当たり約23,200円/中学校1学級当たり約44,700円) 
 『朝の読書』を「総合的な学習の時間」(以下総合学習)に組み入れたいという学校が多いようですが、『朝の読書』は「総合学習」とは性格が違うものです。なぜならば、何も求めない自由な『朝の読書』に対し、「総合学習」は教育課程の中にある授業として「指導」と「評価」が必要になります。『朝の読書』は授業として指導しない、評価をしない自由読書が基本です。評価や競争が発生すれば「読書」が子どもたちに負担となり、形骸化する恐れもありますので、熟慮が必要です。
●「朝の読書」に関するお問い合わせは・・・
朝の読書推進協議会 事務局宛て 
〒162-8710 東京都新宿区東五軒町6-24(株)トーハン広報室内
TEL 03(3266)9587 FAX 03(3235)1337

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