毎年恒例の著者アンケート企画!
今年は「惚れた2冊」がテーマです。93名の著者の皆様が、これまで読んでこられた数多の書籍の中から“惚れた”2冊を推薦してくださいました。
(新刊ニュース2016年11月号 連動特集)
解説 『潜行 地下アイドルの人に言えない生活』は、地下アイドルである著者が、実感をともないながらも、対象との適度な距離を保ちつつ、すこぶる丁寧に言葉を選び、地下アイドルという新しい文化を考察していて、稀有。
解説 志村さんは主婦からスタートして人間国宝にまでなった染織作家。彼女が生み出す色と織柄は自然の一瞬であり、心象風景といっても過言ではない。『虚空遍歴』の主人公は自分にしかできない浄瑠璃を生みだそうと苦闘し、孤独と挫折の中で野垂れ死ぬ。何かに人生を賭ける意味を思い出させてくれる二冊。
木根さんの1人でキネマ I love cinema,I am lonely.Vol.1~2
解説 「食べ方」に対して異常なこだわりを見せる「目玉焼き」の二郎。うっとうしいほどの映画愛を周囲にまき散らす「1人でキネマ」の木根さん。自分にはこれといった趣味やこだわりがないので、この二人がちょっとうらやましかったりします。
解説 奇しくも夫婦の話を二つ選ぶことになりました。静と動の違いはあれど、どちらも伴侶という他人を真っ向から愛そうとする勇敢な格闘の話です。
解説 深沢七郎さんが太棹(三味線)を演奏して「楢山節」を歌ってくれたとき、私は作家になろうと思った。74歳になったいまは、谷崎氏の『瘋癲老人日記』にならって、老いの妄執と快楽の日々をすごそうとしております。2冊ともくりかえして読んでいる。
解説 ①王子が大切に育てた一輪のバラと、バラ園で見た無数のバラは、同じバラでも全く違う。縁や絆の本質を教えてくれる不滅の名作。②堕落すべき時には、まっとうに、まっさかさまに堕ちねばならぬ。堕落の先に光を見出す、目からウロコのアベコベ堕落指南書。
解説 影がありながら、外では気丈に明るく振る舞う女性。小説の中でこの手の登場人物と出会うたびに、子供の頃にそういう子を好きになったことを、ふと思い出す。あの女性たちは、いま何をしているのだろう……。そう思わせる小説は悪魔だ!
解説 ①田中角栄氏を「金権政治家」として舌峰鋭く批判し続けてきた著者・石原氏が老境にさしかかり、角栄の偉大さに魅了されるに至った点。②最近流行の「断食」や「一日一食」の健康法であるが、著者は“一日一食”の理由を、「健康の為ではなく、2食以上だと眠くなり、作曲できないから」としている点。
解説 この二冊を並べていいのかわかりませんが、極めて冷静な語り口に惚れました。一冊は暗殺者がターゲットに向かう過程を描き、もう一冊は世界で最も有名な写真の真実を追う過程を描いています。語り口は、いわば物語の道路です。これほど走りやすい道もありません。
解説 職人芸的ダイアローグ。
解説 翻訳物を読んでいたら、魅力的な悪人に続けて出会えた。『シスターズ・ブラザーズ』では、歯磨き愛好家の殺し屋イーサンに。『解錠師』では、解錠に青春をかけた少年マイクに。悪人だからこそ、芯にある繊細さや慎み深さが際立ってしまう。そこに惚れた。
解説 『熊を放つ』は登場人物のジギーに惚れ、オートバイで旅したり、同じようなジャケットを着たり、ノートを持ち歩いてやたらと書き記したり、ジギーの真似ごとのようなことをしていました。もう一人のバイク乗り、東陽片岡さんは、その気取りのない哲学に惚れました。本を読んで影響されるというのは、とても楽しいです。
解説 ①難解な武家世界を平易に説明しただけではなく、興味深い読み物に仕上げている。この一冊で時代ものが三倍おもしろくなる。②読者の首根っこを押さえつけて読み終わるまで紙面から離さないといった迫力が感じられる。これぞまさに森村節である。
解説 吉村昭は現代物でも逃げる話が巧みだ。『長英逃亡』は彼の真骨頂である歴史小説で、さらに逃走ものときては面白くないはずがない。一方『遠い幻影』は現代物の短編集。特に巻頭の「梅の蕾」は、淡々とした筆致で読者を泣かせる。彼の最高傑作のひとつだと思う。
解説 『歴史とはなにか』は、国の枠組みを越えた世界史であることの重要性を説き、『革命前夜』はまさに、ベルリンの壁の崩壊をさまざまな角度から濃密に綴る、優れた歴史物語だと思う。
解説 『赤毛のアン』ウイルス感染に似て、読むと登場人物が体内に入り込み、住み続け、出て行きません。『ノラや』百閒先生の狼狽が凄まじい。消えた猫を捜し回る姿は常軌を逸しています。みっともなさを通り越して、神聖さを感じます。
解説 「この台詞に惚れた!」という作品を選んでみました。『誰か―Somebody』は事件を総括する主人公の義父の一言が、『真実の10メートル手前』は「名を刻む死」を締めくくる主人公の言葉が、深く印象に残っています。
解説 ①主人公の脳内に完全に入り込んでページをめくる手が止まらない。そのグルーヴに惚れました!②何度読んでも読んでゆくと不思議と笑みがこぼれ、気がつくと元気が湧いてくる。
解説 『ハック・フィン』は、ハックがボケて読者にツッコませる感じがとても好きです。『コルタサル』は、さわさわと不安にさせられる感じがとても好きです。種類はちがいますが、どちらにも、読んでいるその瞬間の楽しさがあります。音楽を聴くのと似ています。
解説 日本史史料研究会に集う若手の戦国史研究者がいい仕事をしている。ここでは織田信長に関する2冊を取りあげたい。信長といえば、何となくわかりきっているという印象があるが、この2冊から受ける信長のイメージは斬新である。
解説 どちらも手垢のついたジャンルに思っていたものに新たな可能性を示してくれた2冊です。
解説 平松さんは優れた料理の食べ手だし、本の読み手。その根底にあるのは人間そのものへの興味だろう。まず人間がおもしろいからこそ、彼らのつくった料理や本がおもしろいのだ。平松さんが人間に惚れる、その惚れっぷりに惚れました。
解説 二作とも、子供の頃に「少年少女世界文学全集」(講談社)で読んだ本です。この全集で出会った古今東西の名作こそが、本読みとしての出発点であり、また作家としていつも立ち返る原点です。その中から、特に惚れ込んで何度も繰り返し読んだ二作を挙げました。
解説 ①テクニックの天才・ヒッチコックが、評論家トリュフォーに答えていわく「観客を感動させるのは、演出でも演技でもない。それは映画そのものなのだ」。風邪引いてる時に読んだせいか、涙がぽろぽろ出た。②西部劇と同じく時代劇も滅びるだろう。私にはそれだけだ。この著者は滅びの理由を執拗に調べ上げ、滅びを認め──なお再生の道を探る。映像関係者は全員読め!
解説 2冊ともに高校野球小説だが、『ひゃくはち』は野球を描くことが眼目になっていない。高校生の恋と青春を描くことが中心だ。野球はその背景なのである。この異色の構成がキモ。それに比べて『エースナンバー』は、野球そのものを描いている。しかし試合の行方は必ずしも物語の中心ではない。少年たちの心の成長がメインだ。
解説 ①シャーロック・ホームズとSFを混ぜてもいいんだ!ということを、本作で教わりました。そのバランスも絶妙。傑作です。②原典への深い愛と、抱腹絶倒な言葉遊び。本作を楽しむためにシャーロック・ホームズ全作の原題を覚えたと言っても過言ではありません。
解説 鏡花は、中学時代に読んだ「櫛巻」でつかまり、「売色鴨南蛮」「国貞えがく」「照葉狂言」などが若き日のお気に入り。『日出処の天子』は冒頭でふられた“異様な国書がなぜ書かれたか”という謎が、結末に至って“無限の虚無から…”という答えに収束する。戦慄すべき傑作。
解説 ①内容の読みごたえもさることながら、時の潮流、生命の不思議、そういった何かしら大いなるものを感じさせてくれる本です。②全力で走ってもカタツムリのようにもどかしく、時の流れに押し流されていく中で消さぬ情熱にシビレる思いがします。
解説 著者は毎日新聞外信部長で、粘り強い取材が持ち味。特に「三重スパイ」はアルジェリア、仏、英三ヶ国の諜報機関の手先として活動したアルジェリア人に直接取材し、お伽噺話ではない諜報の世界の現実と怖さを描いており、圧巻。
解説 『四季・谷内六郎』谷内六郎さんの絵を見ると 子供の頃に感じた不思議さや楽しさ 淋しさや怖さを思い出させてくれます。『よるのかえりみち』夜の町に灯る家々の窓の明りを見た時に感じるなんとも言えない気分が見事に描かれていて素晴らしいです。
解説 芥川賞を受賞した『コンビニ人間』がすばらしかったので村田の作品をいろいろ読んだが、三島賞をとったこれが一番キタ。『美しく嫉妬する』はヌード写真集だが、美人でないのに顔だちにある味わいがある。『沙和子 無償の愛』をあげたが品切れだというので同じモデルのものをあげておく。
解説 ベクトルが真逆な二冊である。前者は上品な奥様なら眉をひそめるような描写が炸裂、後者は心の襞を拡大鏡で見てなおかつ絨毛の一つ一つまで観察するような細やかさ。なのに読後感はどちらも愛おしいのである。
解説 青春はかけがえのない季節である。賢さと愚かしさを同時に求めて、最大限にまで高められた自尊心と友愛の気持ちが交錯する。まさに熱烈! 仲間といることの幸福! しかし、いつかは独りになって、自分が何者なのかを否が応でも考えざるを得ない時が来るのだ。
解説 フランスの同時多発テロで妻を亡くしたジャーナリストのエッセイと、歌舞伎町駆けこみ寺の代表、玄秀盛さんの評伝。どちらも選択的な意志によって、幸福になろうと顔を上げる人の話だ。人は運命に翻弄される。それでもどう生きるかを選ぶことができる。
解説 ①子どものタイプにより、伝え方を変えないとまったく逆の効果になってしまうことを解説。タイプ別にどう伝えていいか具体例が書かれているから。②文中のコトバから「僕にしか出来ないこと。それは夢中でやる」
解説 ①情報を意味化するという考え方、見える人と見えない人が共に美術鑑賞するソーシャル・ビューなど、目からうろこが落ちる思い。②歴史事件の裏でどんな薬が関与していたのか、想像しただけでも面白い。ほう、と感心するやら、背筋が寒くなるやら。
解説 『グローバリズム出づる処の殺人者より』は、インドの闇を描き出す異様な緊迫感と諧謔精神に脱帽。『第六ポンプ』は、現代日本にとっても、すぐそこにある危機を描く。短編とはいえ、よくこんな危ないものを活字にできました。
解説 強大な力に立ち向かおうとする主人公。たまに立ち止まることもあるけれど、それでも進む。やっぱり芯が強くてぶれない人物はカッコイイ。ページをめくりながら、胸が高鳴っているのを実感して、まるで少年漫画を読んでいるようだ!と思った記憶があります。
百年の孤独 Obra de García Márquez 1967
解説 20世紀文学の代表的傑作である。『ロリータ』は著者のたくらみがスリルに満ちている。『百年の孤独』は悪夢のような想像力に圧倒される。小説を読む快感がどちらにもある。
解説 乱歩の方は一冊だけではなく、全集として気に入っています。図版や解説も充実していますし、当時の挿絵再録は嬉しい限り。私の宝物です。『ジニのパズル』は、最近読んだものの中のベスト。内容も装丁も素晴らしいです。とても存在感のある本。
解説 装幀です。ジャケ買いです。もうそれだけです。もちろん中身も素晴らしいのですが、とにかく装幀に惚れ込んでページを開かずに買いました。飾っておくだけでも幸せという二冊にしました。
解説 どちらもタイトルと装丁が猫好きにはたまりません。長崎訓子さんが描くかわいい猫たちに惹かれて、自然と手に取っていました。子供の頃に何遍も読んだ『100万回生きたねこ』のとらねこが目に入った瞬間に、手が伸びました。素敵で豪華なトリビュートアンソロジーです。
解説 ①戦争後日本に戻らなかった人たちの人生を追った記録だが、どんな反戦本よりも、辛かった。素晴らしい一冊だ。②さまざまな反ヘイト本があるが、これは、その頂点に立つもの。日本の歴史を抜きにして語れない現在を、見事に解説した。
解説 二作とも、もし可能であれば私がインタビューして評伝に挑みたかった素晴しい対象人物たち。著者お二人の情熱とその成果に脱帽。
解説 ①鈍感で誠実で将来性ある好青年の言動のいちいちが、もどかしいわぁ。品格たっぷりの文章、鴎外だから書けたのだと思われます②遠野に嫁いでわたしの大事な旦那様に、せっせと尽す。そんなことが憧れになる本だ。ただ生きて死ぬだけ、そのことの素晴らしさ!
解説 『私が殺した少女』は探偵が魅力的でカッコ良く、ハードボイルドのお手本の様な作品。展開も速くラストが映画を見ているようだった。『ハサミ男』の方は強烈なタイトルにひかれ手に取った。だまされないぞと意気込んで読み進めたが最後に見事だまされた。
解説 あまりに有名で、誰もが知っている本を、今一度胸の底から取り出して読み直すと新鮮です。「現象」ではなく「本質」に触れることが出来るからだと思います。溢れる新刊本の中で、普遍の力を持っています。
解説 原発事故、ほとんど真実は知られていない。皆さんいい加減な感覚でとらえている。もっと科学的に。チョット専門的すぎるけど。人の人たる所以はどこにあるのか。脳か心臓か、あるいは……。究極の人間の姿。いつの日にかこういうことが起こるでしょう。きっと。
解説 ①話の筋は勿論ですが、絵本には、絵を読み解く楽しみがあります。この絵本、描き込みが半端ないんですよ。頁を開く度に新しい発見があります。②近寄り難くて、親しみやすい。冷徹に見えて、慈悲深い。そんな角川春樹さんの魅力に溢れた一冊。(おずおずと打ち明けますが、実は解説を書かせて頂いてます)
解説 ①パリのイメージそのままな、可愛いデザインにうっとりするガイド本。だんだんとパリの街がみえてきて、読み物としても楽しい一冊!②東京駅を舞台に、個性的な登場人物28人の偶然が猛スピードで転がり、絡まっていく展開が爽快! 連載中の「ドミノⅡ」も期待です。
解説 夫婦愛、というととても美しく聞こえるけれども、ここに描かれている愛は、ややこしくてぎこちない。夫婦のままならなさと底知れなさが、じわじわきます。
解説 ①これぞ女性の理想像と惚れ込んだのですが、当時つきあっていた女子大生に、これは男の考える女の理想よと一蹴され、大ショック②水道橋博士と玉袋筋太郎が交互に語り、その中から浮かび上がってくるものを味わう。徒弟制を生きるということとともに味わう
解説 探偵はむろん犯人も同一という連作短篇。ミステリの王道でありながら覇道でもある怪作と、日常の謎にはじまって国際情勢にまでスケールアップしてゆく学園ミステリ。どちらも垣を越えて溢れ出る物語のエネルギーに惚れた。
解説 『腕一本で抱えて止めた』この一文で恋に落ちてしまった『しゃばけ』。主人公ケイの活躍に魅了され、新刊を追い続けた検屍官シリーズ。ほっこりと、衝撃と、交互に読むのがオススメですよ。いえ、本当に。
解説 ①初期村上春樹の最高傑作です。青春小説であり、純文学であり、ミステリーでもある。文体もストーリーも、そして佐々木マキによるカバーも好きです。②映画『ブレードランナー』の原作にもなった小説。人間は人間以外と恋愛できるか。人間とは何かを問う哲学的なSFです。
解説 文章に色があり、匂いがあると思える二冊。いつまでもこの本を読み続けていたい、 終わるのが惜しい。そういう読書体験があるから、読書はやめられません。
解説 『夢想の研究』は、これを読めば映画と本をますます好きになれるから。「アイデアとは組み合わせ」だとすれば、瀬戸川氏は間違いなく天才的なアイデアマンです。『猛き箱舟』は、「人間の成長(変化)」が鮮烈に描かれているから。自分の作風とはまるで違いますが、船戸氏の筆力には心底憧れています。
解説 ①は戦中に愛された「戦友別盃の歌」や「国境の町」の作者の人生を次女の視点から追った労大作。一生に一作しか書けない深みがある。②は乃木大将愚将説に反論し、司馬遼太郎『坂の上の雲』の史実誤認を詳しく批判する問題作。
解説 この二作は、読んで惚れないのが難しいというか……。大学生だった僕を、作品の全てで完全に魅了しました。
解説 ①祖父江慎さんの装丁が凄い!表紙から見開き、そして挿絵までが壮絶なまでに美しい。これはもう書物というよりは工芸品だ。電子書籍云々の声が如何にかまびすしくなろうとも、こういう紙の工芸品の前では沈黙するよりない。②もう表紙だけで本の中身と方向性が明確に分かる。著者が国会議員だった当時のことを知る中高年読者には、さぞかし読書欲をそそられる表紙だろう。田中角栄のどアップとたった二文字のタイトル、そして著者名。この三つさえあれば帯も要らないくらいだ。
解説 前者は2011年以降のドイツ。後者は2014年のアメリカの現実を、それぞれの手法であぶりだしている。前者がナチズムの復活。後者がテロの脅威。いずれも当事国だけの問題とは言えない。読んでいるうちに、ふと、まわりを見回したくなる、社会派ホラー小説。
完訳 ファーブル昆虫記 (全20巻・継続刊行中)
解説 新鮮で的確な訳文で、読みやすい。本の判型が大きく、イラストや写真も豊富で、見ているだけでも楽しくなる。
解説 人生を変えられた二人の私小説作家。殊に前者への片思いが、ド下手な私小説を現在もムキになって書き続けている原動力になっています。
めぐりあうものたちの群像 戦後日本の米軍基地と音楽1945-1958
解説 本は手に取って、、ページを繰って、見るためのもの。「読む」のではなく。──という不変の真理をあらためて教えてくれる2冊。もちろん、読んでもよし。 ①は、びっしりと詰めこみ過ぎた文字の列に悶絶(?)する。
解説 誰もが持つ人間の善と悪が掘り起こされ、腹の底に抱えている欲望や邪知をえぐり出されるよう。人間が破滅するプロセスが描かれながら、そこにある救い、生きる意義を教えてくれる気がする。言わずもがな、両著者の世相に切り込んでいく観察眼と取材力、筆力・表現力は圧巻。
解説 内田百閒の『百鬼園随筆』に収録されている「蜻蛉玉」は、何事にも真っ直ぐ揃っていないと心落ち着かぬ性格の男で、ずぼらな性格の私には、初めて出会った他者で、どう付き合えば良いのか途方に暮れた。太宰治の『お伽草紙』は、慣れ親しんだ昔話を教訓話にしない処が面白く、大人の童話となって読む度に考えさせる。
解説 月原作品は殺人の目的にア然とさせられました。横溝的な舞台設定も好き。
メインの森をめざして アパラチアン・トレイル3500キロを歩く
解説 前者は感動の151日である。全長3500キロのロングトレイルを全踏破した記録! 惜しまれつつも急逝した著者の自然への愛の深さに涙。片やもう1冊は、都市伝説にからんだ恐怖の4日間。その原稿を読んでしまうと、振り袖姿の日本人形が遠くからだんだん近づいてくる! 夜も眠れぬほどの怖さをおぼえつつも、ページをめくる手が止まらぬ傑作に惚れた!
解説 『百億の昼と千億の夜』は50年ほど前。『シャイニング』は40年近く前の作品ですが、どちらもわたしの文体に強い影響を与えた作品です。『百億の──』は文章の、特に序章のリズム感が心地よいです。『シャイニング』は微に入り細をうがつ描写に圧倒されます。
解説 世界の結末や孤独について考えると、心が殺伐として不安におそわれる。そんなとき、人の優しさやあたたかさを信じる気持ちになれる2冊です。
解説 「惚れた」理由がまったく異なる二冊となりました。土方歳三の生涯を、熱く感動的に描いた『燃えよ剣』。人生に忍び込む、不可解なできごとと意外な真相を、短く鋭利に切り取る『オー・ヘンリー傑作選』。中学・高校時代のやわらかい心にぜひどうぞ。
解説 いずれも、高校時代に強い衝撃を受けた小説です。書き出しの短い文章が、かくも深く心に刺さるのかと、小説の持つ力を思い知りました。今でも折に触れ、読み返します。特に『スティル・ライフ』の最初の2ページを音読すると、気持ちがとても落ちつきます。
解説 大杉栄は、まるで現代文学のように、気ままに、心の赴くままに書いている。規範に従う気持ちが根っからなく、他人に対しても抑圧的でない。コミュニストでなく、これぞアナーキストだ。明るい。ベケットは私は「ベケット」と聞くだけでうっとりする。ベケットのどこがそんなにいいいのか。私はそれをもう30年以上考えている。
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解説 ギターに限らずとも、好きになったものを好きなだけ集めたい、と思うのは男女を問わず誰しも同じだろう。しかも野村さんの凄いのは「気になったら買う、借金してでも買う、倉庫を借りてでも手元に置いておく」というその徹底ぶりだ。実に気持ちがいい。
解説 地獄でも再読したくビニールのカバーが丈夫そうで良いです
解説 ①少年少女が立ち向かう壮大な悲劇には、終始、圧倒された。小説を読んで、こんなに心を揺さぶられたことは、後にも先にもない。②20年前にこの本をきっかけに一緒に街歩きを始めた。赤瀬川さん亡き後も、その楽しみは続いている。
解説 『いつも同じお題なのに、なぜ落語家の話は面白いのか』説得力のある具体例でグイグイ引き込まれました。特に「アウェーで真価が問われる」という耳の痛い話が刺さりました。『あなたは、なぜ、つながれないのか』内向的な自分が感じていたモヤッとしたものを言葉にしてくれ、自分だけじゃないんだと救われました。具体的な行動策もあり親切です。
解説 梓崎さんの作には、日本人がデビュー作から海外を舞台に選べる、新時代の到来を感じました。『死の棘』は、文学者とはここまで自らの体験を克明に記憶し、克明に描かなければならないのかと。
解説 就職活動などで、周りがそわそわしていた頃に、ほんわかのんびり暮らす“るきさん”になりたいと単純に憧れていましたが、実はとてもちゃんとしてる人にしか出来ない生き方なんだろうなあとも感じていました。整頓された配色の美しさにも惚れています。
解説 どちらも旅先で見つけて思わず購入した絵本です。作者の想像力と不思議な空間が描かれた世界観に惚れました。読み終わったあとに、絵本ってもっと自由で良いんだと思わせてくれる、心地よい時間が味わえる2冊です。1人でひっそり読むのがオススメです。
解説 『新宿物語』『娼婦たちから見た日本』につづく、どちらも2作目。さらに充実した内容で読者をうならせる。前者は実体験に基づく骨太の小説、後者は身体を張った現場ルポ、人間の生と性が生々しく浮き上がってくる傑作、さすがです。
解説 建築小説二冊。「衣」「食」についての小説は多いが、「住」の小説は意外と少ない。家について考察できる貴重な小説。
解説 ①流れの早い風の中で、それとは見せずに昔の本をつかまえてはなさない老人力。②一頁ずつ、こんなにゆっくり楽しめた本は久し振り。ちっとも凄んではいないけれど凄い本。
解説 『果しなき流れの果に』は、私がSFに開眼させられた一冊であり、今も世界で最高の「青春小説」と信じている。『虚無への供物』は、読んでいて、これほど異次元に引き込まれるような感覚を覚えた小説はあとにも先にもこの一冊しかない。
解説 『燃えよ剣』シンプルで力強く、ぶっきらぼうでさえある。一見、自分にも書けそうな気がするが、決して手が届かない。土方歳三の生涯を描くのにこれ以上相応しい文体はない。『許されようとは思いません』短編ミステリとはこう書くのだよ、と教えられた。
解説 ①執筆に行き詰まった乱歩が逃げ込んだ古い洋館ホテル。奇妙で奇怪ながらも温かく居心地のいい雰囲気に惚れました。②民俗学をベースにした怪談短編集。怪異だけでなく、登場人物から醸し出される空気もじわじわと居心地悪く不気味な気分にさせてくれます。
解説 『影を踏まれた女』は88年の旧版から。幽霊は出てくるが、ジワジワ怖さを醸しているのは幽霊より登場人物の運命。二冊とも長年再読を繰り返しています。綺堂もイエイツも十九世紀末から二十世紀初頭の躍動の中を生きた人で、ともに自由で柔軟な精神を感じます。
解説 ひとにとってなにが大切なのか、まっすぐに書こうとしても、文章は往々にして曲がってしまったり居丈高になったり、説教らしいくさみが出てしまう。誠実であることを真正面から書き得た『ウィンブルドン』や『クローディアの秘密』には、だから惚れている。
解説 ①才能があるという言い方をするが、実は努力の差とその目標設定が重要だとわかってくる。天才はいないのだ。②もの忘れには脳の機能が影響する、その機能アップこそがもの忘れの防止になる。
解説 惚れ込んだ本は数々ありますけれど、①は中でも愛読書で、幾度となく目を通し、書棚へ戻す度に抱きしめたくなります。②は随分以前に息子から原著を買ってもらったのですが、石井桃子さんの名訳を味わう幸福感は、ますます深まってまいりました。
解説 ①43名もの要介護老人を殺す男のミステリーなのだが、川崎の高齢者殺人事件を予見するように介護の実情があまりにリアルで、異様な不快感に却って惚れてしまった。②は格差社会をあきらめるなというメッセージなのだが、主人公の男は、自分がもしガンを宣告されたらと空想して書いたので、つい感情移入をしてしまう。
解説 謎のちりばめ方と、その回収が一切の不足なく行われるところにグッときた。ホントにすごかった。テトリスで、ブロックを苦労して積み上げた後、最後に「棒」のブロックが出てきて、一気にドンッ!とブロックたちが消えるかのような快感。謎と回答の論理構築が完全にできているので、読んだ人に、あの部分なんでそうなってると思う?などと理解度を試したりするのも一興。
解説 ①山を知り尽くした作家だから書けた小説。しかしながらありきたりな山岳小説にとらわれないスケール感に惚れること間違いなし。②昔気質の男臭い主人公を、現代社会の中に何の違和感もなく登場させるところが面白い。燻銀のエンターテーメントは、読み応えあり。
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