シルクハットにタキシード。いかにも名探偵らしい風貌をした男、メルカトル鮎。だがこの男、ただの名探偵ではない。提示した真相は絶対に外れることのない“銘”探偵なのである(と、本人が言っている。)この探偵、とにかく意地が悪い。真相を知っていながら解決をわざと遅らせるなど、これまでの名探偵=ヒーローという像をぶち壊しにかかる。その頂点が短編集『メルカトルかく語りき』で、ここでの彼の行いには開いた口が塞がらない。