仁木悦子が江戸川乱歩賞を受賞してデビューしたのは1957年、松本清張が『点と線』を発表したのと同じ年である。『猫は知っていた』以降、数作に登場する仁木雄太郎&悦子は兄妹同士の探偵コンビだ。植物学を専攻する学生の雄太郎が探偵役、音大生である悦子が語り手となって小説は進行するが、その語り口が明るく、実に親しみやすい。これが清張とともに仁木が推理小説ブームの一翼を担った理由でもある。