鮎川哲也は長編デビュー作の『ペトロフ事件』をはじめ、数多くの作品で巧妙なアリバイ崩しを主眼にした。そのアリバイ破りの役目を担うのが警視庁捜査一課の鬼貫警部である。粘り強く、辛抱強い性格の鬼貫は犯罪を立証するためなら日本全国どこへでも赴き、わずかな手がかりから論理の力によって事件の真相を看破してみせる。謎解きの醍醐味、ここに極まれり。