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読書活動定着への歩み

 
▲石垣中学校の「朝の読書」風景

 沖縄本島から南へ約450qに位置する石垣市は、沖縄県八重山諸島の政治、経済、産業、交通の中心地となっている市である。石垣といえば「海」そして「芸能の島」である。毎年多くの観光客が島を訪れ、今や石垣島を支える産業は「観光業」となっている。さらに、八重山といえば「歌の島・詩の邦・踊りの里」として、日本中にその名が知られており、独特の民謡、トゥバラーマが庶民に親しまれ、旧盆のアンガマ、豊年祭など、古くからの伝統行事が今でも根強く残っている。その石垣市の中で最も歴史ある学校が、石垣中学校である。本校は1949年に創立、これまで多くの卒業生を輩出している。

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 本校は離島・へき地校という地域柄、昔から家庭の経済格差、それによる学力差が顕著に見られ、生徒の学力向上が長年の課題となっている。本校に「朝の読書活動」が取り入れられて、今年で14年目。その間、図書館教育モデル校など読書活動に関する研究を引き受け、「朝の読書活動」が推進されてきた。
しかし3〜5年前の本校は沖縄県の中で「生徒指導困難校」と言われ、読書活動すらままならない学校であった。朝の読書の時間、読書をする生徒はクラスにわずか数名、後の生徒はおしゃべりや伏せて寝ている状況であった。しかし、そんな生徒達に読書が定着していったのは図書館司書・司書教諭の工夫と、職員やPTAの協力があったからである。新年度の最初に職員会議において読書の大切さ、効果などを伝え、「まずは、先生が読書を行う」という共通確認を行った。また、「読書点検活動」を図書委員と職員が連携して行い、「朝の20分間はクラス全員が必ず読書をする」雰囲気作りを図った。

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 当初は「強制で読書をさせることに意味があるのか」という職員からの疑問の声もあったが、「食わず嫌い」ならぬ「読まず嫌い」の意識を変えるためには、強制から始まる読書もあっていいのではないか、という意見を理解してもらった。さらに、生徒へ「読書の意義」を理解してもらうために、4月、「図書館オープニング集会」を持った。その中で、読書クイズや「朝の読書三原則」について話し、さらに、ブックトークの中で『本を読んで甲子園へいこう!』(村上淳子著)を紹介し、読書の効用について説明した。様々な事前取り組みが功を奏し、昨年度から「朝の読書活動」の様子が一変した。これまで騒々しかった朝の学校は、8時15分の鐘と共に静まりかえった。そして、生徒はそれぞれに、興味のある本を手にし、一心に読み始めたのである。これまで「本嫌い」だった生徒も、「本を読まないといけない」という状況から次第に図書館へ足を運ぶようになり、みるみるうちに図書館の貸出冊数も増加していった。朝の読書活動がきっかけで、本を読むようになったという生徒の声もたびたび聞こえるようになった。現在では、「朝の読書活動」の時間には、離れた建物からくしゃみの音が聞こえるほど静まりかえった雰囲気の中で読書をする生徒達の姿が日常的に見られるようになった。

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 このような成功の裏には、何よりもPTAのハード面(蔵書)の協力が不可欠だったと思う。本校のPTAが年間に図書館へ寄贈する予算額は県内でも類を見ないほど多く、その豊富な予算をうまく活用し、今の生徒の興味・関心に合った本や、先生方の推薦図書などを選書し、図書館には一般の書店にある新刊が毎月並べられているのである。その充実した蔵書の中から、生徒はそれぞれに自分の好きな本を借りることができる。今では、生徒から「先生、こんな本が読みたい。」と、リクエストが来るまでに至った。
 15年目を迎える本校の朝の読書活動が軌道に乗り始めて未だ数年。現在の状況維持、そして更に高いレベルの「読書活動推進」に向けて、教職員・生徒とともに頑張っていきたいと思う。


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