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苫小牧市 啓明中学校
▲啓明中学校の「朝の読書」風景

 私の国語の授業は読書から始まる。始業を告げるチャイムが鳴ると、生徒は読みかけの本を開く。私も本を読む。10分たったら授業開始のあいさつだ。ここ10年間、受け持ったクラスのほとんどで実践してきた。
きっかけはこうだ。今からちょうど10年前、金沢で行われた全国学校図書館研究大会。その時の読書指導の分科会でそのような実践発表を知ったのだが、発表者の言葉が今でも 耳に残っている。「全校一斉の朝読書をしたいのだが、なかなか実現しない。それなら自分の授業でやっちゃえ」
当時、私も同じ悩みを抱えていた。どうやったら朝読書を行うことができるのか。その方法を模索しているときだった。まず、自分の手の届く範囲から始めてみよう。2学期からさっそくやってみた。

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 生徒の反応は上々。生徒の側には、普通の国語の勉強が10分短くなるという不純な動機もあったのかもしれないが、自分で用意した本をよく読んだ。欠勤のため自習監督をお願いすることがあるが、「チャイムと同時に本を開き、夢中になって本を読んでいるので、自習課題を配るのが申し訳なかった」とは先輩教師の弁。きっかけと時間を与えれば、子どもは楽しんで読書することを実感した。
これを足がかりに、全校一斉朝読書の実現にはなお3年を要する。学校現場を変えるのは簡単ではないことを痛感した。

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 と、ここまでは私の前任校である苫小牧市立明倫中学校での話。
北海道が朝読書の後進地域であることは紛れもない事実だ。道教委の発表によると、道内の朝読書の取り組み状況は小学校で66%、中学校で53%となっている(平成19年度)。他の都府県に比べると低い割合なのだろうが、10年前の様子から考えると大きく進歩しているといえる。

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 苫小牧市はどうか。苫小牧学校図書館協会の調べによると、小学校で78%、中学校で79%となっている(平成20年度)。
苫小牧はスポーツの街だ。昭和41年、全国で初めて「スポーツ都市宣言」を行い、市民の健康増進に力を入れてきた。ここ数年は高校野球が脚光を浴びているが、もともとはスケート、特にアイスホッケーが有名。17万の人口に、公営四つ、民営一つと五つもの屋内スケートリンクがある。
しかし、子どもの読書の土壌も昔からあった。小学校では保護者が絵本などの読み聞かせを行う活動が活発で、平成5年には、苫小牧読み聞かせ文庫連絡協議会なるものが組織された。また、学校図書館の環境整備を中心とした学校図書館ボランティアは小学校を中心に多くの学校で組織されている。
こうした地域、保護者の方の力をベースとしながら、平成17年に市が策定した「苫小牧子ども読書活動推進計画」も朝読書の実施率を押し上げた一因だろう。

 課題もある。小学校の朝読書は、ほとんどが週に1、2回の実施で、全校で毎日取り組んでいるのはわずかに5校(22%)。中学校は9校(64%)なだけに、少なさが際だつ。だんだん読書をしなくなるのが中学校からだということを考えると、中学校が小学校と同じ傾向をたどることのないよう願うばかりである。

 最後に現任校の苫小牧市立啓明中学校の話を。2年間の試行(期間限定の実施)を経て、全校一斉の現在のかたちになったのは平成16年度。まだ5年目である。当初見られた学年による実施状況の差も小さくなり、ようやく軌道に乗ってきたところか。もちろん、生徒からも保護者からも好評だ。そうなることは初めからわかっていたのだが。


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