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小さな朝の積み重ね

愛媛県伊予市伊予中学校
▲伊予中学校の「朝の読書」風景

 伊予市は愛媛県の中予地方に位置しており、西には瀬戸内海を臨み、東には緩やかな山々が広がる自然の豊かな地域です。そんな伊予市の南部にわたしたちの伊予中学校はあります。四方を緑に囲まれた非常に穏やかな環境の中、毎日を過ごしています。全校生徒は211名と、決して大きな学校ではありませんが、明るく素直な生徒が多く、あいさつが自慢の学校です。伊予中学校のあいさつは「いつでもどこでも誰にでも」。その通り、休み時間や放課後など、学校の至るところで気持ちのよいあいさつが飛び交っています。特に朝の登校時は玄関から教室からと、明るく楽しそうな生徒の声が職員室まで聞こえてきます。
ところが、毎朝8時5分になるとにぎやかだった朝の学校が、空気が止まったかのように静かになります。10分間の朝の読書の始まりです。さっきまで笑い声が絶えることのなかった教室から聞こえてくるのは、本のページをめくるかすかな音だけ。生徒が一対一で本と向き合う時間です。
本校の朝の読書のルールは、「毎日やる・みんなでやる・好きな本(マンガと雑誌は除く)でよい・ただ読むだけ」という朝の読書の四原則に従ったシンプルなものです。特に難しいルールなどは設けず、とにかく生徒が自然体で取り組むことができるようにしています。だから、生徒の読んでいる本は様々で、読んでいる生徒の表情も様々です。

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 本校で朝の読書の取り組みが始まったのは、今から5年前のこと。「生徒にもっと本を読んでほしい」という教職員の強い思いをきっかけに始まりました。当初は、教職員の職員朝礼と並行して行っており、教室では生徒のみで朝の読書を行っていました。生徒の主体性に任せたわけですが、お世辞にもうまくいっているとはいえないものでした。やがて教職員が抱えていた不安が的中。朝の読書の時間に宿題をする生徒や、本を読まずにおしゃべりをする生徒がふえ、なかなか読書をする雰囲気が生まれませんでした。たったの10分間本を読むだけのことがこれほど難しいのかと、改めて考えさせられたのです。

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 この問題を解決するため、本校では話し合いを重ね、「生徒だけの朝の読書では効果はない。教師も一緒になって本を読もう」と、勤務時間の開始を5分早めて、職員朝礼を7時55分からにしました。朝の読書の開始時刻には、生徒とともに教室にいるようにしたのです。
その効果もあり、本校の朝の読書の風景は少しずつ変化していきました。職員朝礼が長引き、時間通りに教員が教室に行くことができなくても、時間になると生徒は進んで本を開き、読書に取り組むようになりました。
また生徒の選書の手助けとなるよう、平成17年度には、愛媛県立図書館の児童協力図書約250冊を団体貸出として借り入れ、各学級に学級文庫として設置しました。さらに平成18年度には、地域の方々から100冊以上の文庫本を寄贈していただき、新たに学級文庫に加え、現在各学級文庫には50冊以上の本を配置しています。また、毎月図書委員会が発行している図書だよりでは、図書委員のおすすめの本を紹介したり、全校生徒に図書館の利用を促したりしています。

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 朝の読書を始めて5年。小さな朝の10分間を毎日積み重ねた成果は徐々に現れ、「生徒にもっと本を読んでほしい」という当初の願いは達成されつつあります。朝の読書の時間だけでなく、休み時間に本を読む生徒の姿や、昼休みに図書室に通う生徒の姿が多く見られるようになってきました。また、図書室に設置しているリクエストBOXには、こんな本が読みたいと毎月たくさんのリクエストが寄せられます。
心を豊かにするのに読書が必要不可欠なことは言うまでもありません。生徒の心がますます豊かに育っていくよう、これからも本校ではこの小さな朝の10分間をこつこつ続けていきたいと思います。

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