潤徳女子高校の建つ足立区千住はいわゆる「大江戸八百八町」の北限で、江戸時代頃から日光街道・奥州街道の宿場として発展した町です。松尾芭蕉が「奥の細道」で旅立ちにあたり「行春や 鳥啼き 魚の目は泪」と詠んだ地であり、現在でも旧日光街道沿いには紙問屋であった横山家や骨接ぎで有名な名倉医院が並び、江戸の面影を残しています。
この町に本校が設立されたのは一九二四年(大正十三年)、千住地域の有識者で結成された千住町教育会が母体となり、城東地区唯一の女子私立学校として開校されました。以来八十五年、共学化の波が押し寄せる時代にあっても創立の経緯を尊重し、女子の真の自立を実現したいという意図から女子校を貫いています。
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「朝の読書」は一九九九年(平成十一年)に始まりました。当時はまだ実施校が少なく、「一時間目の教室移動は間に合うのか」「SHRでの連絡事項が徹底できるのか」等々、細かい点での不安はありましたが「生徒たちに読書を通して自分の世界を広げてほしい」という点で一致をみ、導入が決定されました。開始にあたっては全職員が「お薦め本」を3冊ずつ挙げた冊子を作成して生徒に配布、それらの本は図書室にコーナーを設置して大々的なキャンペーンを展開しました。また「読書のすすめ」という通信を発行し、そこには図書係の生徒たちからの「お薦め本」も掲載して、浸透をはかりました。
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あれから十年──導入当初はなかなか集中しない生徒も見受けられましたが、今では毎朝八時半から十分間、校内が一斉に静まり集中して読書に取り組んでいます。その要因の一つが司書の先生と図書係の生徒たちの活躍です。本校の図書室では新入生に手作りの図書室案内の冊子を配布したり、社会の出来事とリンクさせて特設コーナーを設けたり、図書室前に係の生徒たちが推薦する本の紹介を模造紙に書いて貼り出したりして、一般の生徒たちが利用しやすいよう日々活動しています。その甲斐あって生徒たちの読書量は図書の貸し出し状況からみても年々増え、「こんな本を入れてほしい」という図書室への要望も多くなりました。また生徒たちによる読書に関する座談会では「たかが十分、されど十分、集中力がついた」「朝の読書用の本をさがすうちに読書のジャンルが広がった」「漢字が分からなくても前後の内容から当たりをつけて読めるようになった」「生きている上ではありえないことを体験させてくれる、それが楽しい」等々の発言があり、学校生活の中で読書が大きな位置を占めるようになってきているのを感じています。
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今後は読書内容が「軽量化」している生徒たちにどうアプローチしていくかが課題となると思われます。人生は一度きりですが、読書を通して様々な生き方を体験することができます。「朝の読書」が生徒たちの人生をより豊かにする一助となるよう願っています。
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