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10分間の読書を見つめ続けて…

広島県 呉昭和高校
▲呉昭和高校の「朝の読書」風景

 私が「朝の読書」と出会ったのは1994年。書店で『朝の読書が奇跡を生んだ』(高文研)に出会い、自分もぜひやりたい! と感じました。まずは自分の授業で…と考えましたが、当時は思い切ってやる事が出来ず、そのままになっていました。
 その後、工業高校に転勤しました。国語の必修単位数が、三年間で七単位と少ないため「読書指導」に割く時間もなく、図書室もほとんど利用されていないという状況でした。その中で、やはり「読書」は必要だ、という思いに駆られ、自分の授業の中で「10分読書」を導入しました。本を持っていない生徒には、こちらが用意した本を見せ、そこから選ばせました。最初は「読書〜?」と言っていた生徒も、毎時間声かけをし、続けていくことで少しずつ「読む」ということに慣れていきました。
 やがて全クラスの国語科の授業の冒頭で10分読書が行われるようになりました。

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 卒業を前にした生徒に「国語の授業で印象に残っているのはどんなことか」と問うと、「10分読書」について書いていた生徒が多くいました。中でも心に残っているのが「僕はこれまで本を一冊丸ごと読み切ったことがなかった。それが10分読書のおかげで読み切ることができ、さらに自分でも驚いたことに学校の図書館で本を借りた。読書があってよかった」というコメントです。
 そんな経験を経て、2007年に呉昭和高校に異動してきました。本校は広島県南部、呉市にある全日制普通科の学校で、各学年二クラス全校生徒二三七名の小規模校ながら、生徒は勉強に、部活動に励んでいます。本校では、2004年4月から「朝の読書」が全校一斉に始まっていました。学級文庫が用意され、教室には連絡事項用のホワイトボードも備えられ、「朝の読書」を推進する環境は整っていました。しかし、生徒からは、「読書していなくても何も言われない」「何を読んでいいかわからない」など、「朝の読書」に対する悩みも聞かれました。そこで、自分にできることは何だろう、と考え、「生徒と本との出会いの場を作ろう」と決めました。

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 授業で生徒に「読んでみたい本のジャンル」「好きなこと」を書いてもらい、それを基に、一人一人に合わせた本を選書し、授業の最初に本の紹介をするという取り組みを始めました。紹介したい本が図書室にない場合は、購入をお願いして、紹介した本は必ず学校で借りることができるようにしました。生徒は「今日は誰に紹介するん?」と自分以外の人に紹介された本でも興味を持ち、その場で借りていくこともありました。また、この紹介を通して日常的に本について生徒と語る雰囲気ができ、読書の幅を広げるようなアドバイスができたり、全く読もうとしなかった子が本に触れるきっかけが生まれたりしました。

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 今年度は担任を持ち、学級通信でも読んで欲しい本を紹介していますが、担任として「朝の読書」をするのは初めてなので、やはりとまどうことも多くあります。しかし、読んでいない生徒は「ダメ」なのではなく、「どうして読んでいないのか」ということを考える。いつもは読んでいるのに今日は読まないのか、いつも読んでいないのか。また、読書に対して抵抗感があるのか、うっかり本を忘れてしまったのか、体調が悪いのか、何かあったのか…。一人一人の生徒をしっかりと見つめ、そっと声をかけてみる。「朝の読書」は「ただ本を読ませるだけの時間」ではなく、「生徒一人一人を見つめ、その成長を見守る時間」だと思います。日々、時間に追われ、ゆっくりと生徒を見つめる時間を確保しにくい状況もある中で、この「朝の読書」の時間を大切にしていきたいと考えています。

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