四方を山々に囲まれた甲斐の国、山梨県は身延町に峡南高校はあります。峡南は峡の南部の意味です。甲斐と言えば武田信玄を思い浮かべる方も多いかと思いますが、武田時代の甲斐は九筋二領に分かれていたそうです。
九筋は直轄地、二領のうちの一つが穴山氏治下の河内領で、峡南地域はほぼ河内領にあたります。河内領は山地が多く農業生産力には劣り、十七世紀後半以降、美林と楮・三椏の生産および紙漉きで特色付けられるようになりました。本校にほど近い西嶋の手漉き和紙は現在でも書道家に珍重されています。
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本校は、1923年(大正12年)に久那土ほか7ヵ村組合立峡南農工学校に始まり、4年後には県に移管、1957年現校名となりました。時代を反映して設置学科は農業から工・商業へと変わってきましたが、この地域の実業学校として86年の歴史を持ち、地域の発展に貢献してきました。校訓は「質実剛健、勤労愛」で、『少年行』で知られる中村星湖作詞の校歌にも「勤労愛の峡南高」とあり、校歌の中でここが一番好きだとおっしゃる同窓生は少なくありません。社会に貢献できる産業人を育てんとする教育方針は今も変わらず、今年度、文部科学省から「目指せスペシャリスト、スーパー専門高校」に指定され、3年間の取り組みが始まりました。
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本校が、前任の教養情報主任の熱意によって「朝の読書」を始めて6年目になります。8時40分から5分間、校内にはバッハやモーツァルトの曲が流れ、心を落ち着けて、朝の読書に入るよう促します。各自が読みたい本(漫画、雑誌、写真集等は除く)を「ただ読むだけ」ですが、終日行事の日や試験期間中、学期末の半日の日を除いて、毎朝10分間行っています。特色があるとすれば、教員も全員分担箇所があって朝読に参加することです。導入当初、果たして生徒が静かに読書するだろうかという懸念があって、このような指導体制がとられたものと思われます。各HRには正副担任以外にもう一人、学年に所属しない教員が配置されていて、たとえ朝読に先立つ学年打ち合わせが長引いてもHRには誰か教員がいて指導できるようになっています。また、廊下、昇降口付近に立つ教員もおり、管理職が読書しながら校内を歩くこともしばしばです。生徒だけでなく、教員にとっても心静かな10分間、貴重な読書の時間であるが故に全教員の協力が得られるのだと思います。
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本校図書館の貸し出し冊数は、朝読初年度に増加して以来、微増減を繰り返してきました。しかし、今年度は、携帯電話を始業から終業まで使用禁止としたためか、昨年の2倍近い貸し出し冊数を記録しています。今後は司書、司書教諭だけでなく、一般教員と生徒の間でも読書が更に話題となることが望まれます。
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