稚内市は日本の最北端にある人口4万の街で、近くには利尻、礼文が見え、晴れた日には、遠くにサハリンも見えます。漁業と酪農と観光が主な産業です。稚内市には小・中学校、併置校あわせて20校あります。そのうち市街地にあるのは、小学校5校、中学校4校です。現在、この9校に稚内市の事業として、『図書館協力員』を配置しています。身分上は、稚内市の臨時職員で、週5日で一日5時間の勤務となっています。
本校では子ども達の心を耕し、学びの基礎を培うために「朝の読書タイム」を設けて11年になりますが、図書館協力員さんから図書室での子ども達の様子を聞いてみました。
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授業終了のチャイムが鳴ると、あっという間に20〜30人の子ども達が図書室へやってきます。借りたい本が決まっている子は、本棚へ一目散に向かっていき、本があれば「あった。この本が読みたかったんだ」とうれしそうに私のところへ来ます。借りたい本がなければ「あ〜あ、今日もなかった。早く読みたいのに」とがっかりした様子になります。友達と連れだって来る子は、「この本おもしろかったよね」「そうそう、ここは笑えるよね」「この続きはあるかな」などと楽しそうに会話をしながら本を選んでいきます。また、好きな本の世界に一人でどっぷりと入り込んでしまい、休み時間の終わりのチャイムにも気づかずにいる子に、「チャイム鳴ったよ」と声をかけると「えー、全然聞こえなかったよ」と言う子もいます。低学年の子が「ハリー・ポッター」の本を借りていくので、「こんな難しい本読めるの」と聞いてみると、「お母さんが読んでくれるの」と言う子もいます。お母さんが小学生になっている我が子に長い物語を少しずつ読んであげるなんて、とってもステキですよね。他にも「弟に借りていってあげるの」と言う子や、「お母さんがこの本読みたいって」と借りていく子の顔には優しさが溢れていて、本の貸し出しを通してこういう会話ができたときは、本当に心温まる思いがします。また、折り紙の本を見ながら、それに挑戦している子につきあう先生方や、図書室に来ている子たちの様子を見ながら、きめ細かく声をかけてくださる先生方もいて、子ども達は安心できる場所の一つにもなっているようです。
誰かが借りていった本が、あっという間にそのクラスや学年、兄弟を通じて人気の的になり、一斉に貸し出され、なかなか借りられないということもあります。子ども達の口コミの力はすごい≠ニ感じさせられる瞬間です。
子ども達にとって、学校の図書室で本が借りられるということは、子ども達一人一人の心を豊かにするのはもちろんのこと、本を通じて周りの友達や家族とのコミュニケーションをも増やせることになるんだな、と改めて感じさせられます。
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子ども達にとって、図書室が安心できる場所の一つになっていることは、読書活動を進める上でとても大切なことです。それを教師とは違う図書館協力員さんが担ってくれていること自体が稚内市の学校図書室の財産です。市の財政も大変厳しいのですが、この事業の継続を期待すると共に、図書館協力員さん任せにしない図書室運営を心がけ、子ども達の心を耕す場とするよう、「朝の読書」ともども先生達みんなで読書指導を続けていきたいと考えています。 |