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小中一貫教育で「朝の読書」を9年間

長野県木曽郡大桑村立大桑中学校
▲大桑中学校の「朝の読書」風景

 大桑村は、長野県南西部に位置する、岐阜県に近い自然豊かな山間の村です。1年を通して降水量が多く、内陸性の気候のため昼夜の気温の差が大きいこの地は、木曽ひのきの生育に適し、かつては林業が盛んで、昭和の中頃は人口が8千人を数えました。しかし、今では林業の衰退と共に人口が減少し、過疎化が進行している状況です。

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 そんな小さな村ですが、2001年から10ヶ月児にブックスタートを始め、保健センターで妊婦や未就園児を持つ保護者に対して、子どもにどんな本を与えたら良いかというアドバイスをしている他、保育園では保育士が、小学校では毎週1時間の読書の時間に司書が、子ども達への読み聞かせに熱心に取り組んできました。さらに、学社融合を提案してきた地教委の発案で、2002年から小学校に読み聞かせボランティアが入るようになったことから、ますます読書好きな子どもが増えてきています。

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 一方で、中学生になると部活動や学習に追われ、なかなか読書の時間が取れないといった声が聞こえてくる現状を受け、近隣に生まれた文豪・島崎藤村の言葉「三智」(※)から「三智を磨く」を学校教育の理念に掲げている本校は、2001年度から全校生徒一斉の「朝の読書」を週1日のペースで始めました。
 一部の生徒が電車通学のため、「朝の読書」を取り入れるための日課の編成作業は大変難航しましたが、朝の部活動の時間を短縮することで「朝の読書」の時間を確保しました。そして、1年間取り組んだところ、1日の生活を落ち着いて過ごせる等の成果が現れたことに加え、読書への関心が高まった生徒から「もっと本をたくさん読みたい」という意見が多数出ました。そこで翌年から毎朝10分間、「朝の読書」を実施することになりました。さらに今年からは、朝の部活動の終了時間を5分早めて、着替えや準備の時間を確保し、落ち着いて「朝の読書」を行う環境を整えています。
 生徒には年度当初の図書館通信で、「なぜ「朝の読書」をするのか」ということと、「1日10分間の「朝の読書」を3年間続けると約100時間読書することになる」ということを伝えて、動機付けとしています。

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 村に1軒あった書店は数年前に閉店し、木曽郡内には公共図書館もありません。しかし、このような環境だからこそ、学校図書館の蔵書構成を見直し、「好きな本でよい」としている「朝の読書」であっても、読書ジャンルの偏りを解消していくことが今後の課題だと考えています。
 村内に3校あった小学校は2003年に1校に統合され、小中一貫教育を進めている大桑村の子ども達は、9年間「朝の読書」をすることになりました。大桑村の子ども達が読書に親しむのに、「朝の読書」の時間は大切な時間になっています。

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