石川県立小松商業高等学校
▲小松商業高等学校の「朝の読書」風景
日本海に臨む小松安宅の関は、義経・弁慶・富樫による智・仁・勇の物語、歌舞伎十八番「勧進帳」の舞台。本校は、地域の学校として諸先輩方が小松市に設立した創立93年を迎える商業の専門高校です。資格取得者数については全国トップクラス、部活動も大変盛んで、生徒達は検定勉強や部活動にと忙しい毎日を過ごしています。
小松商業高校では、年間を通して図書館関係の行事をいろいろと企画し、「読書の楽しみ」「読書の重要性」について啓蒙する活動を行っています。今では、当たり前の光景となった「朝の読書」の取り組み、先生方と協力しておこなう「推薦図書の紹介」、節目の貸出者を表彰する制度の導入、先生をゲストとして招きいろいろな話をしていただく「図書館教養講座」の開催、「読書会」の実施等、「本の楽しみ」を伝える活動に力を入れています。
平成16年度から取り組んだ「朝の読書」の取り組みは、図書館入館者の増加と、貸出数の増加につながる取り組みであったと言えます。全校生徒で取り組むことによって、朝の読書の習慣は定着してきていると考えられます。本との付き合い方はいろいろですが、活字を読む抵抗感はまちがいなく減ってきていると思います。図書館へ入館する回数が増加することによって、「図書館がコミュニケーション広場の役割をはたしている」と感じられる場面が増えました。図書館という場所で、図書館内でのマナーやルールを学び、他者を尊重できる態度を育てることも重要です。
高校生の多くは、受験勉強や部活動に追われ、或いは、多様な娯楽に囲まれ、本を手にする機会もなく日々を過ごしています。そのような状況を踏まえると、読書は娯楽だけではなく、高校においては基礎学習の領域になってきたのではと考えられます。活字離れ、読書離れと言われる中、心も体も大きく成長するこの時期に、本を読み、本から視野を広げ、感動する心を養うこと。ひとりでも多くの生徒に、読書の楽しさや喜びを感じてほしいと考えています。
「先生、おもしろい本、なあい?」と言いながら図書館にやってくる生徒達は、本の感想とともに、日常のいろいろな思いをのぞかせてくれます。「本を通して家族や友達との会話が増えた」という女子生徒達。「だらだらテレビを見ていた時間に本を読むようになって時間の使い方に無駄がなくなった」という運動部の生徒。本校の図書館司書は、卒業式の後に図書館にやってきて、「もし図書館で本をすすめてくれなかったら、僕は一生本を読むことはなかったかもしれない。ありがとうございました。」と言ってくれた野球部元キャプテンの言葉が一番心に残っていると言います。「本って、楽しいね!」という言葉が、何人もの生徒の口に上る、「朝の読書」を始めて本当に良かったと心から思う瞬間です。 (「書店経営2014年3月号」掲載)
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