福井県立金津高等学校
▲金津高等学校の「朝の読書」風景
金津高校のあるあわら市は、福井県の最北端に位置し、日本海、湖や川、山々、優れた泉質の温泉など自然の恵みにあふれたところです。
本校は、昭和58年に創立し、一昨年に創立30周年を迎えました。地元坂井地区からの進学生が多く、素朴で親和的な雰囲気の中、学習にも部活動にも熱心に取り組む活気ある学校です。福井県の朝の読書の実施率は全国一だそうですが、坂井地区の小中学校でも定着しており、それが高校でも継続、発展的に行われていることが本校の朝の読書の大きな特色と言えます。
朝の読書が導入されたのは平成16年、今年は11年目にあたります。導入した当時の本校は、今のような落ち着いた雰囲気がなく、金津高校を変えていこうという風潮の中で朝の読書が始められました。「読書よりも朝学習を」という意見もありましたが、人生をよりよく生きる力をつけていってもらおうと読書が選ばれました。「毎日やる」ために校時表を改正し、「みんなでやる」ために全クラスに学級文庫を設置。職員は意義や方法を勉強し、生徒にオリエンテーションをして、朝の読書は開始されました。いざ始めてみると大きな混乱もなく、朝の静寂な時間が訪れ、朝の読書が定着すると同時に学校も落ち着きを取り戻していきました。
学級文庫は、各クラス約50冊で、図書費とは別に予算が付けられています。図書部や国語科の教員を中心に選書を行っており、読書になじみのない生徒でも手に取りたくなるように、絵本や洋書を含め多様なジャンルの本をとり揃えています。明るく一日のスタートをきれるような本や、10分間で読みやすいものなど、やはり朝の読書を意識した本選びになっています。さらに、ずっと置いたままでは魅力がなくなりますし、本も傷みますので、学期ごとに本の入れ替えを行っています。その作業や、本の点検・整備は各クラスの図書委員が行っています。また、朝の読書に学校全体で取り組むために、本校では『朝の読書 実践ガイドブック』(林公著/メディアパル)を全教員に配布し、職員の共通理解を図っています。新学期には、担任の先生それぞれの言葉で、読書がいかに大切かを話してもらっています。生徒も「考える≠アとをするようになった」「視野が広くなった」など肯定的に受けとめています。
朝の読書を始めて丸10年、派手な活動ではないですが、全校生徒と職員が毎朝取り組んできたことに対して「朝の読書大賞」受賞という評価をいただけたことは誇りでもあり、今後の励みにもなります。高校生は、部活動に勉強にと時間に追われ本当に忙しく、余裕がありません。しかし、青春期に活字とどのようにつきあうかで将来は変わるでしょう。
忙しい毎日、朝の読書の時間だけは諸々の用事を忘れ活字に触れて、心の豊かさを養っていってほしいのです。思考のひろがりに限りはありません。豊かで自由な読書の時間をこれからも大切にしてほしいと願います。(書店経営2015年2月号掲載)
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