トップページ朝の読書ホームページ→「朝の読書」トピックス

読書で人の心の襞を学ぶ

静岡県浜松市 浜松学芸高等学校
▲浜松学芸高等学校の朝の読書風景

 一九九六年(平成八年)は朝の読書運動が、大きく動いた年のように思います。第一回朝の読書全国交流会米子大会の開催、朝日新聞や東京新聞の特集記事、NHK教育テレビでの江藤淳氏の論説、林公氏の菊池寛賞受賞などが、その象徴的な出来事です。期せずしてこの年の六月、本校では朝の読書の実施を目ざして、船橋学園女子高校(現、東葉高校)へ視察者を派遣。明けて平成九年、これも視察のため静岡県立新居高校を教頭が訪問。六月十一日には、全職員と全校生徒が取り組む朝の読書が開始される運びとなりました。当時の全国における実践校は二〇〇校程度だったと記憶しています。爾来六年有余、本校の朝の読書は、滞りなく続いていますが、七月の初め、当地の新聞社から取材したい旨の連絡が入りました。聞けば朝の読書推進協議会の事務局長佐川二亮氏が、新聞社に紹介してくださったとのこと。佐川氏には、平成十一年一月、朝の読書推進静岡大会(第十二回朝の読書全国縦断静岡交流会)のときにお目にかかりました。長年にわたって、朝の読書の推進に力を尽くしておられる佐川氏の誠実なお人柄には、いつも敬服しております。脚光をあびている林公氏や大塚笑子氏に並んで、朝の読書を今日の隆盛に導いた功労者だと私は思っています。

□ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □

 さて、新聞記事は朝の読書の歴史や普及状況、効果を伝えるものでしたが、本校にかかわる部分だけ、引用しておきましょう
 「浜松市の浜松学芸高は、平成九年からの実践校。七月初めの朝の教室。山田詠美の『ぼくは勉強ができない』を読んでいる生徒がいる。『ハリー・ポッター』に、はまってしまった生徒もいる。村上春樹、吉本ばなな、江國香織、赤川次郎も人気。漱石、太宰、ヘミングウェー、カフカも健在だ。シーンと静まり返り、集中した顔が輝いて見える。二年生の柴田倫志さんはこの短い時間はぼくに読書の幅を与えてくれた%ッじ二年の小林尚子さんは一冊本を読み終える根気と集中力が確実に身についた≠ニそれぞれ感想を残した。」
 ここでもう少しだけ、私どもの学校にかかわることを述べておきます。平成十一年一月二十四日、本校中村記念館ホールで、朝の読書推進静岡県大会を開催。百五十名の小中高教員が参加、林公氏の講演と実践校の体験報告を行う。同年八月二十日、全校職員の研修会で大塚笑子氏の講演。同年十二月『心の教育と朝の読書』(A5判四十八頁)発刊。十人の教員の所論掲載。平成十二年二月、朝の読書活動と『心の教育と朝の読書』の刊行によって、はごろも教育研究奨励賞受賞。奨励金の五十万円は図書の購入費にあてる。

□ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □

 ところで、朝の読書の実践報告は、林公氏、大塚笑子氏のものをはじめ、推進協議会の『朝の読書46校の奇跡』など目白押しで、その効果の実例も今や、出尽くした感さえあります。重複を恐れず、あえて私の考えを二つだけ述べておくことにいたします。
 まず一つは、相手の感情や立場を思いやることが不得意になって来ている生徒たちに、朝の読書を通じて、複雑な人の心の襞を学ばせること。二つ目は、朝の読書を教育の手段・機会と考え、生徒達の心を知り、生徒と心を通わせる糸口にするよう、それぞれの教師が工夫すべきだということです。

□ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □

 朝の読書をとりまく社会的状況は、数年前とは比較にならない位変化しました。中央教育審議会や文科省が朝の読書の重要性を説き、実践校が九、〇〇〇校を超える現在から往時をふり返りますと、まさに隔世の感じがいまします。実践校になるための障壁が低くなり、今後は加速度的に増えて行くことも予想されます。
 人間関係が希薄で殺伐とした現代。その中において、書籍を媒介とした心の対話、己の心をみつめる機会になり得ることこそが朝の読書の一番の効用だと考えています。


朝の読書ページトップへ

−無断転載を禁ず−
Copyright (c)2000 TOHAN CORPORATION