棚小では、八時三十分になると元気に登校してきた六八一名の子どもたちが、一斉に思い思いの本を開き、読書の世界に入ります。あっと言う間に学校全体が静寂に包まれ、一日が始まります。本校の「朝の十分間読書」は、「子ども読書年」の二〇〇〇年からスタートしました。
近年、子どもの活字離れや国語能力の低下などが指摘されていますが、本校では二十一世紀を担う子どもたちの「生きる力」を育む教育活動の一環として、全校「朝の十分間読書」の充実を位置付けています。
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読書は、言葉を介して生きている人間の心の深いところにメッセージを送り続けると言われています。読書に内在している力が、自らの課題を乗り越えようとする力、すなわち、生きる力を育み、心の荒れやすい子どもたちの心を癒してくれるものと確信しています。さらに、子ども時代に多くの本と出会うことは、言葉を学び、感性を磨き、表現力を高め、想像力を豊かにし、子どもたちの生涯学習の基盤になると思われます。
毎日、楽しそうに読書する子どもたちの目の輝きを見ていると、「朝の十分間読書」を、息の長い活動として実践を充実していくことが必要だと考えています。
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今年度は、さらに広げて保護者に「親子十分間読書」の提唱をしました。各家庭で、子どもも大人も、漫画以外の好きな本を毎日、たった十分間読むだけの時間の確保をねらっています。例えば、低学年なら子どもと一緒に音読をする。中高学年ならテレビのスイッチを切って、家族一斉に読書タイムを十分間設ける方法です。どんなやり方でも良いのですが、家庭に静寂の時間を取り戻すのが目的です。たった十分、されど十分です。毎日の積み重ねの親子の読書は、子どもにとって、家庭の温もりの中でやがて至福の時間になり貴重な体験になると思います。子どもたちと共に読書の歓びを、学校から家庭、そして地域に広げられたら最高だと考えています。
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ちなみに、今年この十分間読書を実践していて嬉しいことが三つありました。
一つは、新学習指導要領の趣旨を踏まえて、今年から学校図書館図書整備5か年計画が再スタートし、650億円の地方交付税が予算化され、「子ども読書活動推進法」が発布施行され、四月二十三日が「子ども読書の日」と定められたことです。子どもの読書の環境整備に大変喜ばしいことだと思います。
二つ目は、学校図書館のボランティアを募集したら、九人のお母さんたちが駆けつけてくれたことです。本校では、地域に開かれた学校として、授業公開をしてますが、さらに、地域の学校、地域の図書館という感覚で、図書室にきてもらい、本の整頓や貸出の手伝い、二十五分放課後に本の読み聞かせなどをやってもらおうという呼びかけです。保護者の反応の早さと熱意に歓びを覚えます。
三つ目は、この夏に最高の出会いがあったことです。それは「十分間読書の提唱者」である林公先生が本校にきてくださり、読書について、熱く語ってくださったことです。林先生のお話を聞いて、ある教員は、「…朝の読書を実践し、広めていく時の大変さ、さらに次の段階へ進めていく必要性を熱く語られ、そのエネルギーや情熱的な姿勢に頭が下がりました。二学期から気持ち良く十分間読書に取り組むことができそうです。」また、若い教員は、「朝の読書は、本が読めるようになることが目的ではなく、本を介して教師と子どもが心のコミュニケーションを図ることもできるということが分かりました。今まで子どもたちに読書させることに精一杯だった部分もあったので、もっと柔軟に読書≠捉えていこうと思っています」などの感想を得ました。
私自身、林先生が力説された読書の魅力を教師自身が納得し「自己変革する喜び」「読書を通して子どもと語り合う喜び」を得られる学校経営をしたいと意を強くした嬉しい熱い夏でした。
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