本校は、平成十二年度、学校が「荒れ」の状況を呈し、暴力事件が年間32件、いじめ8件、不登校生徒15人、それに授業妨害や、授業エスケープ、喫煙など、すさまじい状況でした。
昨年度(平成十三年度)新任校長として着任して、まず取り組んだ事は、学校正常化へ向けて、『ルールを守り、学校を学習の場、学びの場』へ立ち返らせる事でした。そのための策として、始業式までに、問題行動、課題のある生徒の状況を全教職員が把握し、始業式を迎える前に、各々の生徒宅へ複数の教員で家庭訪問をし、次の二つの事を保護者の責任でやっていただくようにお願いしました。
一、始業式には服装を整えて登校すること。
一、茶髪の頭髪での登校は許さない。茶髪で登校した時には、家に帰り、髪を黒く染め直して再登校する。
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始業式を迎えました。生徒が急に変わるはずはありません。平気で茶髪で登校し、先生を挑発する生徒・先生の注意を振り切る生徒、ルーズソックス、ネクタイをはずしている、超ミニスカート等々。中には、新体制で学校の教職員がどのような対応をするのかを遠目で監視している保護者もいるというすさまじさ。全教職が分担し、生徒を説得し、服装、頭髪を直して始業式が開始できたのは、定刻よりも四〇分遅れた時刻でした。その後一貫して学校の方針を変える事なく、生徒のわがままは許さない、例外を作らないを基本に全教職員が一丸となって取り組みを進めていきました。
一学期は、毎日午後五時過ぎに教職員全員で生徒の状況交流会を実施しました。その後課題のある生徒宅への家庭訪問を複数の教員で行い、再度全教職員が集まり、翌日の取り組みを確認するという積み重ねをする中、一学期後半には、授業をエスケープしたり、授業妨害をする生徒はほとんどいなくなり、少しずつ学校は落着いてきました。
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後一歩、なんとかならないかと考えていた時、教員冊子「日本教育」の特集「本を読む喜びの再発見」の中に、全国朝の読書連絡協議会会長・林公先生が書かれた「本を読む喜びは、朝の読書によって、すべての子どもに約束されている」を読む機会に恵まれ、“これだ!!”と思い、二学期からとにかく朝の読書を取り入れてみよう!! きっと子どもの心に何かを与えられると思い決断しました。実施するには教職員の中で推進する者が必要です。夏休みに広島市で実施された朝の読書実践校交流会に国語担当者を出席させ、実施へ向けての計画を立てさせ、全教職員に提示しました。先生方の反応も意外とすんなり“まず、やってみよう!!”の意見にまとまり、朝の読書実施が決まりました。もちろん、朝の読書へ向けて夏休み中には、図書室の整備、学級文庫の準備等読書環境は整えておきました。二学期の始業式では、学校長の挨拶の中で、九月四日から朝の十分間、読書をする事、読書を通して多くの人と出会い、自分を成長させて欲しいという願いを話し、朝の読書がスタートしました。
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静かに始まる朝の読書。誰にも強要されることなく好きな本を自由に、先生も生徒も一緒に読む。静寂な時が流れる。十分間の読書が終わると、担任が一日のスケジュールを確認し、静かに一時間目の授業に移ります。
朝の読書を始めて一年半。昨年度一学期の学校の状況が嘘のように、生徒は落着いて授業、生徒会活動、部活動に取り組んでいます。何よりも嬉しいのは、地域の方々の声。「神辺東中学校の生徒は、大きな声で気持ちの良いあいさつができる!!」
また、図書館も、本年度の一学期に地域ボランティアの方々の御支援を得て一万冊の蔵書をパソコンへ入力しました。二学期からは昼休憩時間の図書館の開館業務も地域ボランティアの力をお借りしています。
これからも朝の読書を継続し、心豊かな子どもを育んでまいりたいと考えています。
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