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本を読むって楽しいね

滋賀県大津市 唐崎小学校
▲唐崎小学校の朝の読書風景

 琵琶湖の西岸、比叡山の麓に位置する唐崎小学校。児童数九百六十人余りの大規模校である。子どもたちはたいへん明るく、エネルギーにあふれているが、反面、落ち着きがなく、物事に集中してじっくりと取り組むのが苦手な子が多い。
 そんな本校で、全校一斉の「朝の読書」がスタートしたのは、昨年の四月である。私は、この「朝の読書」の時間が好きだ。始業前、四階の教室に向かう途中の廊下にも、そうっとドアを開けて音を立てないように入る教室にも、決して強制されたものではないゆったりと落ち着いた静寂が感じられるからだ。その雰囲気に包まれて、子どもたちとともに好きな本を読むことがささやかな楽しみである。

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 私の教室には、六年生の社会科の歴史学習に少しでも興味をもってくれれば…との思いから、『まんが日本の歴史』のシリーズが置いてある。予想通り、「朝の読書」が始まってすぐは、このコーナーに子どもたちの人気が殺到した。私は、(せめて朝の読書の時間は、漫画以外の本も読んで)という言葉を飲み込んで、しばらく様子を見守ることにした。すると、どうだろう。これまで落ち着いて本を読めなかったり、細かい字ばかりの本を読むのは面倒だと言って漫画一辺倒だった何人かの子たちが、次第に、文庫本などを読み出したではないか。おもしろかった本を友だちと回し読みする姿も見られた。『ハリー・ポッター』などの長編を熱心に読み始める子も出てきて、その変化には驚かされた。先日実施した「朝の読書」についてのアンケートにも、『今までは家でもまん画ばかり読んでいたけど、朝の読書をしているうちに本の方がおもしろくなってきた。』『本を読むと時間のたつのをわすれて読めるので楽しい。』『少しの時間で集中できるようになってきて、本がおもしろくなった。』という感想が見られた。

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 子どもたちに、「本を読みましょう」と言うと、「感想文を書かなあかん?」という反応が返ってきて、ドキッとすることがある。もちろん、文章表現力を培うための一つの方法としての感想文の指導には意義があるのだが、子どもたちの中で“本を読む=感想文を書かされる”という図式ができてしまっていて、そのことが子どもたちを本から遠ざけているとしたら、私たちは反省しなければならないのではないだろうか。誰に強制されたのでもなく自ら読みたいと選んだ本を手にとり、ゆったりとその世界に浸る楽しみを知る――“みんなでやる・毎日やる・好きな本でよい・ただ読むだけ”の四原則をもつ「朝の読書」は、そのための絶好のチャンスである。
 アンケートの中には、こんな感想もあった。『家では読書をする時間があまりないけど、朝の読書では、いろいろな本や自分が読みたい本をたくさん読めたからよかった。』子どもたちもハードなスケジュールで生活している。本を読むのが大好き、でも時間がない、という子たちにとっても、「朝の読書」の十分間は、束縛されることなく好きな本の世界に浸れる、大切なひとときになっているようだ。

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 「朝の読書」をきっかけに変わったのは、子どもたちだけではない。PTAからは、学級文庫充実のための資金援助をいただいた。今後、保護者と学校が中心となって、学校図書館の改造を進めていこうという計画も出てきている。
 本を読むことで、人は想像力を育み、感性を磨き、心を癒やすことができる。まさに「本は心の栄養」である。日々、テレビゲームなどで、絶え間ない音声と刺激的な映像のシャワーを浴びている子どもたち。だからこそ、今、一人でも多くの子どもたちが読書の楽しさを実感するチャンスとして、この「朝の読書」の取り組みを大事にしていきたい。


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