「今まで外でばっかり遊んで、本は全然読まへんかったんやけど、朝の読書タイムで毎日読んでると、早く次が知りたくなってどんどん読んでしまいます。」「ぼくは学校で読んだ本の続きがどうしても読みたくなってしまうから、塾へ行く電車の中でも読んでいます。」「何で本なんか読まんならんの、と思ってたけど、好きな本ができてはまってしまいました。同じ所を何回も読むことがあります。」これは、朝の読書に寄せる子どもたちの感想です。
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平成10年度から3年間、文部省(当時)から学校図書館情報化活性化推進モデル地域事業の指定を受け、図書館と子どもを結ぶ取り組みを始めました。その一つが朝の10分間読書です。初年度は秋の読書月間で1ヵ月間、毎朝読みました。すると保護者懇談会で「家で本を読むようになりました」「朝の読書はいいですね。是非続けてください」こんな声が聞かれました。もともと読むことの好きな子どもたちだったのでしょう、生活の中に読書空間が生まれてきたように思われました。
静寂な一日の始まりを大切にしようと、平成11年度は、毎朝行ってきた職員朝礼を火・木・土曜日はなくし、「朝の読書タイム」の時間としました。そして教員も教室で子どもたちと共に本を読み始めました。3学期、4年生が1泊2日で雪山での体験学習に出かけた時のことです。入所して荷物を部屋に入れた後、全員がホールに集合します。みんなそろうまでの待ち時間に、早く来た子がホールの本を読み始めたというのです。「他の学校と一緒だったけど、本棚の近くに座りこんで読んでいるのは本校の子ばかりでしたよ」という引率教員の話に、読もうとする子が育ちつつある、朝の読書の成果を感じました。□ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □
そして平成12年度からは毎日、朝の10分間読書を行ってきました。この間、学校図書館の地域開放事業や家庭での10分間読書「ホーム読書」などを実施して、本との出会いを大切に作ってきました。また、10年間におよぶPTAボランティアの読み聞かせも子どもたちの読書活動の支えとなっています。少しずつ読書への関心が高まってきましたが、悩みはやはり本が少ないことです。登校してきた子どもたちは、チャイムが鳴るとすぐ読書ができるよう、読みたい本を机の上に出しておきます。家から読みたい本を持って来る子は多くはありませんから、始業前にも図書館を開館しています。また図書館から各学級に60〜80冊くらいの本を貸し出し、読みたい本をすぐ手に取ることができるようにしています。それから、子どもたちと公共図書館に出かけて行って利用指導を行ったり、学校経由で図書館カードを作成したりして、1年生から一人で本が借りられるように働きかけていますが、さらに行政の力に期待したいところです。□ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □
教科学習では、選択できることがあっても課題の内容はほぼ決められています。けれども読書では、絵本・科学・歴史・ノンフィクションと多彩な本を自由に選ぶことができるので、それぞれの個性や力に合う活動が可能です。そして学級集団の意志の力で全員が読み、毎日継続する。この朝の読書の取り組みで「趣味としての読書はしない」・「どうしても読まなければならないときしか、本は読まない」(平成12年OECD調査)という子ども像を払拭できるのではないかと考えています。
子どもたちの身近にあまり本のない時代、祖母は同じ話を幾晩も繰り返し孫に語りました。テレビがまだない時、母はラジオから流れる連続放送劇を聞いては、枕もとで子どもに語りかけました。私達も本の世界への水先案内人でありたいと思っています。
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