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学びを拓く読書へ

長崎市 私立聖マリア学院小学校
▲聖マリア学院小学校の朝の読書風景

 本校は長崎市の北西部に位置する、全校児童百六十三名の私立の小さな学校である。同じ敷地内に中学校も併設され、小中一貫教育を目指している。
 本校が、「朝の十分間読書」を小中共に本格的にスタートさせたのは、平成十三年度からであり、今年で二年目を迎える。ここでは、主に小学校の取り組みの様子について述べることにする。
 もともと、本校の全校読書の歴史は古く、旧指導要領で「自由裁量の時間」が導入された時からすでに、全学年が週に一時間「コスモスタイム」として、一斉読書の時間を設定し取り組んで来た。
 そのような、読書活動の土壌をもとに、二年前から「読書を通して豊かな心を育てる」ことを目指して朝の全校読書を進めることになった。

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 子ども達は、朝自習のチャイムと共に、それぞれがお気に入りの本を一斉に読み始める。低学年のうちは、好きな本を探すのが困難で、あっという間に読書タイムが過ぎてしまうこともままあるが、中学年になってくると静かに読書できるようになる。幸いにも、本校の学級文庫は充実しており、各クラスに一人あたり三十冊程度の本が備え付けてある。また、学校のすぐ近くには公立の図書センターがあり、そこから借りてきた本を持参したり、図書室の本を利用したりと環境的には潤沢な本に恵まれている。

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 朝の読書タイムを、子ども達はどのように感じているのかを、子どもの声から紹介してみたい。
 『私は、いつも、読書の時間を楽しみにしています。今まで読んだ本の中ではエルマーの本が大好きです。エルマーの本は三冊あるのですが、特に、三冊目がどきどきした所や、がんばっていたところがあります。ドキドキしたところは、りゅうが人間に見つからないように飛んでいくところです。不思議に思ったところは、エルマーは恐竜がきても、びっくりしなかったところです。私は、エルマーは、勇敢な少年だなぁと思いました。毎日、続きを読むのが楽しみなので、読書タイムの時間がくる前から、教室で本を読むこともあります。』とある日の日記に書いている。

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 朝の読書タイムを始めてから、学校に変化の兆しが見え始めている。それまでは、子ども達が休み時間になると廊下を走る光景が目立っていた。ところが、最近では、落ち着いて行動する子ども達が増えてきている。
 さらに、本校では国語の時間に、どの学年も音読指導に力を入れているが、以前と比べると、個人差はあるものの、音読の力が格段に上達しているようである。これは、読書タイムへの取り組みが功を奏しているのではないかと考えられる。
 また、表現力の向上も顕著である。読書によって身についた、言葉の力や想像力が土台となり、物語や絵本作りに興味を持つ児童が現れて来た。私が現在受け持っている三年生に、国語の時間に「物語作り」の単元で、好きな物語を書くよう促したところ、数名の子どもは、長文の物語作りに喜々として取り組み最後まで完成させた。完成度の高さは目を見張るものがあった。
 このような取り組みを受け、本校の図書室には、最近になって、総合的学習の時間や、国語科で取り組んだ、「手作りの物語や絵本」を設置するコーナーが、図書委員会の提案によってなされ、かわいい子ども達の作品が展示されることになった。
 活字離れが言われて久しいが、五十七年前に原爆の瓦礫で覆われた、ここ長崎の「聖マリアの丘」には、朝の静かな静かな読書の時間が、たゆたうことなく流れている。


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