「朝の読書が奇跡を生んだ」。子ども達の読書離れが叫ばれているこの時期に興味深いこの言葉。
全校児童三名の離島にある極小規模の本校でも子ども達の読書離れが感じられた。始業前の十分間。児童も教職員も好きな本をただ読むだけというシンプルな取り組み。
「本当にこれだけで」という疑問を持ちつつ取り組み始めたのが昨年度の四月で、火・木の週二回。
取り組み当初は、子ども達もなかなか落ち着かず、少し読んでは本をかえたり、学年相応の本を避けて絵本ばかりを読んだりと不安は募る一方だった。それでも「朝の読書」の原則を忠実に守り続けた。
そんな中で一番最初に効果が感じられたのは「みんなでやる」という原則だった。普段全くと言っていいほど本から離れていた子もみんなで取り組むようになって本を手に取るようになったことである。
また、子ども達からも反応が返ってくるようになってきた。朝の読書を続けたことにより、「本がスラスラ読めるようになった」とか「たくさんの(種類の)本を読むようになった」などである。さらには、「読書の楽しさが分かってきた」という子どもまで出てきている。
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子ども達からの反応が返ってくるようになり、本年度は「週二回」から四原則の一つである「毎日やる」に切り替えて取り組むこととした。昨年度の子ども達の変容もあり、全教職員が賛成。積極的な取り組みの一つとなった。
本年度の取り組みのキーワードは「毎日やる」ということである。毎日やることにより読書の時間をより一層意識するようになってきた。落ち着いた心で学校生活のスタートを切れるようになったことで、生活態度がより安定するようになってきた。
そのためか、子ども達の反応も積極さが出てきて、「本のおすすめコーナーを作って、おすすめポイントを書いたらいいんじゃないか」という前向きな発言もみられるようになった。
また、「家でも読書をするようになった。」とか「前は読んだことがなかった小説を読むようになった」など、「朝の読書」から「読書」へと幅が広がってきたのも事実である。
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本校で「朝の読書」に取り組み始めてから一年半。この一年半の実践を通して感じたことは、子ども達は読書が好きなのだということ、読書は子供たちの心の成長を支えてくれる必要不可欠のものであるということである。
「朝の読書」の時間は、子ども達が読書できる時間と読書できる雰囲気を与えてくれた。そういう環境がしっかり整えば子ども達は自ら読書の中に楽しみを見つけられる。そんな感覚が教職員の中に広がっている。
本校では「読み聞かせ」の実践は行っていない。理由は一つ。子ども達が「自分のペースでじっくり読みたい。」と言っているからである。子ども達は読書することによって自分の考えをしっかり伝えられるようになってきている。
このように、子ども達は読書を楽しむようになっただけでなく、読書を通じて大きく成長している。これからも読書を楽しみ、喜びを味わってほしいと願っている。 |