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心を育て学力を高める「朝の読書」

福島県東白川郡矢祭町立東舘小学校
▲東舘小学校の朝の読書風景

 本校は福島県最南端にある矢祭町のほぼ中央にある小学校である。創立130年の伝統ある学校で、近くには鮎で名高い久慈川が流れ、矢祭山など自然豊かな山々が周辺部に多い。そうした本校の校長として赴任し1年になるが、様々な本校教育活動の中で、特に優れた活動だと思っているものに「朝の読書」がある。本校では「読書タイム」といい、朝8時から一斉に始まる。
 沿革誌を見て「朝の読書」の始まりを調べてみると、本校で「朝の読書」を日課表に位置づけたのは5年前になる。位置づけるきっかけとなったのは、平成9年12月に本町で行われた教育講演会で、「朝の読書」推進の第一人者である林公先生のご講演を拝聴する機会を得たことである。当時、子どもの学力や道徳性をいかに高めるか大きな議論となっていた。そんな中で、多くの教員が林先生のご講演に感銘を受け、教育課程編成に関する話し合いの結果、学校の日課表に「朝の読書」を位置づけて共通実践することが決まり、始めたものである。本校以外にも町内全小・中学校でも同じ年に「朝の読書」が開始された。

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 始まった当初、本校に勤務していた教師に聞いてみると、初めは自分で読みたい本を選んで集中して読むことができない児童が多くいたという。特に低学年は、難しい状況にあったようだ。そこで、その対策として児童会の図書委員会が「朝の読書」の時間に低学年の教室に入り、絵本や紙芝居を読み聞かせる活動を取り入れた。担任も他の時間を使って読み聞かせや本の紹介をして読書意欲を喚起した。学校全体でも新しい本の購入や図書コーナーの整備など環境改善に努めた。そんな努力もあって、「朝の読書」の様子が次第に変わってきた。学校に登校して着替えを済ませると「朝の読書」の時間前から席について、集中して読書をする児童が多くなった。そして、「子ども読書年」である平成12年には、文部省より「読書活動優良校」として表彰状をいただいたことも励みになり、現在までこの「朝の読書」は継続して行われている。

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 私も朝、ときどき児童の様子を見るため校内を回るが、どの学級も落ち着いて読書をしている。写真のフラッシュにも動じない集中ぶりだ。読んでいる本は、学校の図書館の本に限らず、家から持ってきた本や地域の図書館から借りてきたものもある。児童に「朝の読書」の感想を聞いてみると「楽しい」「本を読むことが苦手でなくなってきた」「気持ちが落ち着いて、勉強に集中できる」など、ほとんどの児童が学級朝の会の前のこの10分を楽しみにしている。児童の学力アップへも効果が現れている。1年生のときから「朝の読書」を継続してきた現在の6年生をみると、諸テストの結果から学年が進むにつれて、読み取る力が向上している。
 ところで、本校は、平成14年度から文部科学省指定の「児童生徒の心に響く道徳教育推進事業」に取り組み、基礎学力の向上とともに心の教育も重視してきた。「読書タイム」には、文部科学省から配布された「心のノート」を広げて食い入るようにして読んでいる児童もいる。また、読書活動は様々な感動場面に出会うであろう。このような活動を通して児童の豊かな心をはぐくみ、道徳性を高めたいと思っている。

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 保護者や地域から意見を聞いても「朝の読書」についての評価は高い。学校で読んだ本を家庭に持ち帰って読む我が子の姿を見るようになったからであろう。参観日には、図書コーナーに立ち寄り、子どもが読んでいる本を手に取る保護者も多い。また、地域に読み聞かせボランティア団体「てのひらの会」が組織されており、本の紹介を兼ね、学校で定期的に読み聞かせ会を実施してくれている。まさに学校・家庭・地域が一体となり連携を図った「朝の読書」となりつつある。今後もこの「朝の読書」を継続していきたいと考えている。


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