本校は、朝鮮通信使として活躍した郷土の偉人「雨森芳洲先生」の生き方に学び、昭和54年に「芳洲七つの願い」が作られ、その一つ目に「本をたくさん読みましょう」のフレーズが設置されて以来、長く読書活動を推進してきた。
平成10年度より3カ年、高月町は文科省より「学校図書館情報化・活性化推進モデル地域事業」の委託を受け、学校と町立図書館のネットワーク構築を行い、児童・生徒の図書館活用を推進する授業の工夫・改善を行った。その取り組みの中で、「読書する楽しさを味わわせたい」という教師の願いから、各校園で「朝の読書」が本格的にスタートした。
本校では、「芳洲読書タイム」として日課表に位置づけ15分間読書(平成14年度までは10分間)を行っている。静かな音楽(朝の読書のテーマ音楽)が流れると、元気な子ども達の声は静まり、校内は静寂さに包まれる。子ども達だけでなく教師もただ本を読む。時には、教師や読書ボランティアによる読み聞かせの声も聞かれる。今、朝の読書は、子ども達の最も楽しみな時間となっている(平成15年度読書調査では、90パーセント近い児童が読書が好きと答えている)。
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さて、本校での朝の読書を中心とする読書活動が定着してきた背景には次の要因がある。
(1)「読書の町 高月」をキャッチフレーズに、小中学校だけでなく、保育園や幼稚園を含めて町ぐるみで力を入れている(教育長の読書にかける強い信念とリーダーシップ)。
(2)町立図書館の全面的な協力体制があり、ネットワークが構築されている(1.人的支援…読書推進への研修支援、図書館職員の学校への派遣等 2.物的支援…子ども達が町立図書館の本を検索し、学校から本を予約して学校まで届けていただける本のリクエストシステム、定期的に学級に届けていただく巡回図書等)。
(3)読書ボランティアによる学校支援活動がある(芳洲読書タイムや昼休みでの本の読み聞かせ、学校図書館の環境整備、集会行事等への協力、図書館に来る子ども達の支援等)。
(4)全教職員の一致した協同体制があり、子どもが本を読みたくなる読書環境づくりに努めている(本を読みたくなる魅力ある図書館運営、学級文庫の設置等)。
(5)図書購入のための予算が増額されている(国の地方交付税措置)。
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しかし、朝の読書を取り組み始めた頃の様子を聞くと、落ち着かない子ども達が本探しに時間を費やしたり、少し読んでは本を替えたり、読書に専念できずにお喋りをしたりする子どももいた。また、教師や保護者の中にも読書より教科等の学習に力を入れるべきだという声もあった。多くの学校の朝の読書の実践に関心を持っていた校長のリーダーシップと図書館教育主任の情熱により1年、2年…と継続させたことにより、まず子ども達が変わってきた。学校図書館や町立図書館での本の貸出冊数が大きく増加したこと、朝の読書の時間になると学校がシーンと静まりかえること、昼休みや家庭でも読書する子どもが増えてきたこと等、子どもの変容が目に見える姿で表れてきた。その子どもの姿が教師や保護者を変えてきたと言っても過言でない。「継続は力なり」の格言どおりの歩みである。
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今、毎朝の「芳洲読書タイム」は年間を通して毎日行っているだけでなく、年3回の読書月間(読書郵便、読書のアニマシオン、個別支援等)、読書集会、PTAの親子読書、学期ごとの芳洲読書賞など、多彩に展開している。これらの活動は、子ども達に「本に親しみ、本を読む楽しさを味わわせるための読書環境づくり」であり、子どもの読書意欲を高めている。読書環境をよりよく整備していけば、子ども達は自ずから進んで本を読む(教師の細かな指導や強要は読書意欲を減退させることが多いと思われる)。朝の読書も読書環境づくりの一つである。
子ども達は読書で新たな世界に思いをはせ、心で対話することを通して心を育てている。私は、子ども達が楽しく読書する学校づくりを日々楽しんでいる。 |