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教職員みなで取り組む朝の読書
―山あいの小さな学校より

群馬県立万場高等学校
▲群馬県立万場高等学校「朝の読書」風景

 始業間もない八時三十三分、校内にカーペンターズの曲が流れる。生徒たちは思い思いに本を開き、一〇分間という静寂の時間が流れる。窓を開ければ、間近を流れる神流川のせせらぎや、鳥のさえずりが聞こえる。終了のチャイムが鳴るとあいさつをし、朝のHRが始まる。
 万場高校は群馬県の南西部、商都高崎から車で一時間の所に位置し、緑の山々と清流に囲まれた山間の高校である。生徒数は一四五名と県内でも小規模だ。しかしながら、自然に恵まれた環境を活かして水産コースを来年度に開設するなど、小さくても元気のある学校である。平成一七年度の入学生から、二年生になる際にはこのコースの選択ができる。内水面(内陸)での水産専攻は非常に珍しく、全国で二番目の学校となる。

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 話は戻るが、冒頭の記述が我が高校での朝の日常である。結論から述べると、朝の読書はその学校の方針・生徒の性質・規模などによって、その実施方法や頻度を柔軟に変えてもよいのではないかと私は考えている。しかし、私の学校では、朝の読書四原則(みんなでやる・毎日やる・好きな本でよい・ただ読むだけ)を地道に行っていくことが、朝の読書の継続と生徒の良い意味での変化につながったのではないかと感じている。
 では、朝の読書をしてはっきり感じられる変化とはなんであろうか。それは、静寂のうちにHRを迎えられることである。以前は、生徒の立ち歩きやおしゃべりなどで、HRをスムーズに行えないクラスもあった。朝の読書を始めて4年目になるが、現在は穏やかに一日のスタートを迎えることができ、学校全体が落ち着いた雰囲気になったと感じている。そして、このことが様々な分野でプラスに波及していると思われる。例をあげれば、昨年度の就職希望者はその年の十二月中に内定率一〇〇%を達成することができた。また職員のアンケートからも、「一日のスタートが心を静めてはじめられる」、「私自身のためにもなるし、生徒も文章の構成の仕方や表現方法の勉強にもなる」といった、朝の読書を通して得られるものが少なからずあることをご理解いただけよう。

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 次に、職員からみた朝の読書をする上での工夫点をいくつかあげてみたい。  第一に、朝の読書とHRを重複させないことである。県内の実践校にアンケートしたところ、校時表の関係からHR中に朝の読書もしている学校があったが、騒がしくなってしまう傾向にあったようだ。第二に、校時表を大幅に変えずに実施したことである。教育の現場では、校時表を変えることに抵抗感を覚える職員が多い。そこで、朝会を五分早め、HRを五分短縮することで、授業の校時を変更せず、スムーズに朝の読書をスタートすることができた。HRは一〇分から五分になるが、静かにHRが始まれば、五分でも充分足りている。第三に、担任の生徒への指導が粘り強くできている。朝の読書をすすめるうちに、「読まない、眠っている、騒ぐ」といった、前向きに取り組まない生徒が出てくる。こういった生徒の悩みは、どこの学校でも起こりうることではないか。我が校では副担任も教室に行くので、担任と二人で地道に指導している。

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 最後に、朝の読書をする上では、職員の共通理解はなにより欠かすことができない。「ただ読むだけ」という生徒・職員にも負担をかけない方法により、我が校では四原則を忠実に守ることで朝の読書がうまくいっている。そして、職員が協力しやすいという小さな学校の利点を活かして、一人一人の生徒に目をかけてあげられたらと考えている。
 私の所感ではあるが、朝の読書によって日常的な落ち着き、自己の生き方を見つめること、人間的な許容などといったものに対して、生徒の知的な「体質」を変えていくことができるのではないかと考えている。朝の読書が、生徒の興味・関心を広げるきっかけになれば、これはとても有意義な学校活動とはいえまいか。


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