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我が校に根ざした朝読の芽

徳島県板野町 板野西小学校諭
▲板野西小学校の「朝の読書」風景

 北に阿讃山脈、南に清流吉野川を望み、田園地帯が広がる豊かな自然に囲まれた板野西小学校は、児童数百三十六名の小規模校である。子どもたちは純朴で、学年をこえて一緒に遊び、元気いっぱいに学校生活を送っている。この板野西小学校にも朝読の波はやってきた。
 我が校では、朝八時十五分から三十分までの十五分間が朝の活動タイムである。昨年度までこの時間は、月曜日の朝会をのぞいて、国語や算数の基礎学力定着のためのドリル学習に使われていた。しかし近年、全国的な朝の読書活動の高まりと、「子どもが本を読まなくなった」という保護者の声を受け、また、教員から子どもの読解力不足を指摘する声と、朝読の必要性を叫ぶ声もあり、16年度から朝の読書活動を我が校でも実践することになった。

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 「毎日十五分、好きな本を、ただ読む」
 毎日続けること、そして、感想などは求めない。至極簡単に思われるこの試みで果たして子どもたちは変わるのか…。いささか不安を感じながらのスタートであった。
 四月、八時十五分のチャイムの合図で子どもたちは思い思いに本を選び始める。さっと決まって読み始める子もいれば、迷う子もいる。時間内に読みたい本が選べなかった子も中にはいたが、読書という活動はスムーズに子どもたちに受け入れられたようである。朝読を始めて二ヵ月たった頃の子どもたちの感想をみると、
・ 読書が楽しくなってきた。
・ はやく本を読みたいと思うようになった。
・ 人の気持ちがわかるようになった。
・ 言葉から想像する面白さがわかった。
・ 時間を決めて、家でも読むようになった。
・ 次は何を読もうかと考え、読む楽しみが出てきた。
など、早くもプラス面での効果が出てきていた。実際、朝読の時間は校内がシーンと静まりかえって、誰一人いないと思われるほどである。十五分間の静寂は、子どもたちの心にも落ち着きと変容をもたらしたようだ。

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 次に、保護者に感想を聞いてみると、
・ 読み聞かせをよくするようになった。
・ 親子で町立図書館へ本を借りに行くようになった。
・ 親子で交代しながら音読をしているが、これまであまり本に興味がなかった子どもが次々読もうと言うようになった。
など、明らかに家庭での読書熱の高まりを感じることができる。
 しかし、実施から一年を迎えようとしている今、新たな課題も見えてきた。それは、本の不足である。毎日全員が学級文庫から本を選んで読むのである。二百冊前後の冊数があっても読みたい本のジャンルは偏っていたり、友だちと重なっていたりする。そのうえ、ある程度読んでしまうと興味が薄れてくる。実際、子どもたちの感想の中にも、
・ 同じ本ばかりでつまらない。
・ 新しい本をもっと増やしてほしい。
という意見がみられた。

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 低学年・中学年・高学年のサークルで学級文庫の入れ替えをしたり、学年によっては町立図書館からの団体貸出しを利用したりしているが、なかなか子どもたちの希望に添うことはできていない。いつも新しい本が周りにある環境を整えれば読書の意欲もますます高まるのであろうが、厳しい予算の中ではそれもなかなか難しい現状である。これからは、町立図書館の利用頻度をさらに高める、読みたい本を家庭から持ち寄るなど読書環境を整備することにより、朝読をさらに充実した活動へと発展させていかなければならない。
 「読書はきらい。朝読の時間がいやだ」と四月当初に感想を書いていた高学年の男子がいた。その彼が今では、「三国志を読んでみたい」と思っている。我が校での朝読の取り組みが少しずつ実を結んでいるのを感じた。


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