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一日のスタートは「朝の読書」から

愛媛県大洲市 南久米小学校
▲朝の読書の時間、六年生が一年生に読みきかせを行っている

 南久米小学校は愛媛県の西部に位置し、周りを山々に囲まれた、児童数二十五名の小規模校である。学校の近くには、PTAの協力で稲作をしている「なかよし農園」、婦人会に助けられながら野菜作りをしている「体験農園」があり、子どもたちは地域に支えられながら日々学習している。ときおり、八十八ヵ所巡りのお遍路さんが道を尋ねて来られたり、子ども達がお接待をしたりという穏やかで静かな地域である。

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 本校が朝の全校一斉読書を始めたのは平成十二年四月であった。何とか読書好きの子どもを育てたい、落ち着いた学習態度を育てたい、という願いから始めたものである。毎日職員朝礼の後、十分間を読書の時間とした。初めのうちは、すぐに席を立って本を替えに行ったり、隣りの子と話をしたりと落ち着かない時間であった。新しい試みで教師たちも迷っていた。「読書好きの子どもを育てるのが目的だから、あまり注意はしないで見守っていきましょう」と教職員も心を一つにし、「どんな本でもいい」「読むだけでいい」を合言葉に、担任も一緒に取り組んだ。学校で本を読む時間など全くなかった教師にも、読書をすることで、忙しい中にもほんの少しのゆとりができた。またこんなこともあった。朝の読書を始めてすぐ、一人の児童が質問してきた。「先生、感想は書かなくていいのですか」私ははっとした。「読書をしたら感想を書く」子どもたちにとって読書と感想がセットになり、読書嫌いを作っているのではないだろうか。「書かなくていいよ。読むだけでいいよ」という私の返事にその子は安心して本の続きを読み始めた。

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 このようになかなか落ち着かない朝の読書であったが、半年たち、運動会が終わった頃からだろうか、気がつくと、朝読書の時間がとっても静かになっていた。以後、本校では朝読書をずっと継続している。一年生の一学期はとても自分で読める段階ではないので、担任が読みきかせをしていた。しかし、六年生の申し入れで、高学年が交代で大型絵本や紙芝居などを読んでくれている。一年生には大変好評で、子どもたちは毎朝、どんな本を読んでくれるか楽しみに六年生を待っている。おかげで、一年生も読書が大好きで、お話の本はもとより、図鑑・伝記・詩などいろいろなジャンルの本を借りるようになった。
 児童数の減少により台本板(図書室で本の貸出し時に使用する板)が余ってきたので、一人が一度に二冊ずつ借りられるようにした。白色の台本板は家庭への持ち帰り用、赤色は朝読書用とした。ほとんどの児童がこの台本板を使用している。また、図書委員会では本を多く読んだ児童に「プレゼント券」を渡し、一度に三冊借りられるという特典を与えた。高学年にも人気で、特に絵本などを借りるのに、この券はフル活用されている。

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 しかし、課題も多い。委員会活動による図書の貸し出しが人数の都合で週三回しかできないということ、また蔵書数が少なく子どもたちに多種多様な本との出会いが望めないということである。これには各担任に協力してもらい、学級単位で図書係による貸し出しをしている。また、市立図書館の巡回文庫を活用し、二、三ヵ月に一回、百冊の配本をお願いしている。
 朝の読書を始めて6年目、本校に赴任して6年目、学校にはいろいろな問題点も多く、「心豊かな子どもに育った」とか「人の気持ちがわかる優しい子どもになった」といったほどの成果はまだない。しかし確実に子どもたちの読書量は増えた。また、落ち着いた気持ちで一時間目の授業が始められるようになった。そして四月に赴任してきた職員の言葉に勇気づけられた。
 「ここの子は静かに読書してるね。学力も高いと思うよ。それに本を大事にしてるし、第一、友だちを大事にしてる」
 「朝の読書」に取り組んで本当によかった!


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