本校の「朝の読書」導入は、平成15・16年度の「学力向上フロンティアスクール事業」の指定がきっかけである。研究の視点である「学びを支える取組」のひとつとして実践してきた。もちろん「読書=学び」だが、学校での一日の始まりとして「学習の構えを作る」という位置付けで始めたものである。それまでは、朝の時間帯は集会活動や全校マラソンなど日替わりメニューであわただしく、時間超過で1時間目の指導に食い込むこともしばしばあった。学校生活のリズムが作れなかった。
今では、毎朝8時15分から25分までの10分間、子どもも教師も皆で好きな本と向き合う。5分前になると校庭で遊んでいた子どもたちも誰に言われるともなく校舎に入り、図書室から借りてきて教室に置いてある本や各階のオープンスペースの本棚に置かれている本、自分が持ってきている本などを取り出して準備を始める。チャイムが鳴ると、どの教室もしいんと静まりかえり、ページを繰るサラッという音が聞こえるだけとなる。職員室の電話の音だけがやけに大きく聞こえるが、子どもたちは少々の物音には動ぜず黙って活字を追っている。学校に自然に規律が生まれてきた。
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フロンティアスクール指定の最終16年度に算数・国語の授業を中心に公開研究会を開催したが、「朝の読書」の様子も合わせて観ていただいた。参観者の感想に、「先生方も子どもと一緒に取り組んでいて、静かな空気の中で一人一人が読み物とじっくり向き合っている姿がすばらしかった」「読書が生活の一部になっている様子が分かった」等の評価をいただき、学力向上のベースになっていることを改めて実感できた。客観的データで比較しても「読み・書き・計算」など、集中力によって養われる学習の基礎基本が身に付いてきたことが分かり、効果も検証できた。余勢をかって3年連続で、平成17年度も自主公開を行った。子どもたちには「できる」という自信が身に付いてきたことを強く感じている。
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この3年間は、「朝の読書」4原則を守りつつも、マンネリ化を防ぐため、少しずつ変化をもたせてきた。この時間帯へのボランティア「おひさまの会」による読みきかせの導入、さらに平成17年度からは語りの会「杉っ子」のおばあさんたちによる昔話も取り入れている。「どの子も話を聞く態度がしっかりしているので驚いた」というのが、読みきかせや語りの会の方が、子どもたちとの最初の出会いでもらす一致した感想であり、これこそ「朝の読書」の成果と思っている。また、子どもたちの学びの履歴を残したいという考えから、読んだ本の書名や読み始めと読み終えた日にちを記入するだけの簡単な「読書カード」も取り入れた。児童会の図書委員会の活動も活発で、現在5・6年生9名の委員で組織されているが、毎月、二人一組になり1〜3年生を対象に紙芝居などの読みきかせを行っている。下学年は上級生による読みきかせの感想を、「お兄さん、お姉さんたちが気持ちが分かるように読んでくれる」「また聞かせてほしい」と表現しているほど楽しみにしている。
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児童数250に対して、蔵書数が約7、600。まだ基準に満たない現状であるが、町内の小・中・高校・町図書室のオンライン化に向けた連絡協議会を立ち上げ、必要なときに検索して貸し借りできる体制を作っているところである。また図書室を読書スペースと学習スペースに分けた利用しやすい空間づくり、図書室だよりの定期発行などの図書館経営の充実とともに、上記のような多様な取組みが評価され、平成17年4月に文部科学省より「読書活動優秀実践校」という大きな賞をいただいた。
これを励みに、さらに創意工夫を重ねながら、「朝の読書」活動の充実とこの取組みをベースにした学力向上を目指す学校経営を行っていきたい。 |