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森太郎のささやき

青森県おいらせ町 木ノ下中学校
▲木ノ下中学校の「朝の読書」風景

 『神霊気比に鎮まりて 木ノ下の森 空を突く…』(校歌の一節)
 こんにちは! 僕は木ノ下中学校の校舎、森太郎です。由緒ある気比神社に見守られ、昭和24年以来、子どもたちと生活してきました。平成12年、新校舎として生れ変わって、7歳になります。以前は、小中学生をまとめて面倒見てきた僕でしたが、周辺の宅地化に伴って、急激に生徒数が増加し、平成3年度には小中分離、現在では青森県内で唯一生徒数が増加している学校です。
 朝、8時15分。僕の中には276名の生徒さんがいるはずなのに、人の気配がまったくしないんだ。本のページをめくる音がかすかに響くだけ。朝の10分間、学校中が静寂に包まれる。ここに至るまでの道のりは険しかった。僕は、その時の苦悩を思い出しながら、幸せな今をしみじみとかみしめているんだ。

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 思い起こせば10年前、僕がまだ木造校舎だった時、当時の校長先生が、「朝読書」を導入した。1日のスタートを落ち着いた状態にしたいという先生方の願いが込められていたんだと思う。スタート当初、生徒さんにも好評で、先生方も生徒さんたちと一緒に読書をしている姿が新鮮で、僕の大好きな時間になった。
 ところが、僕が新しく生れ変わった7年前、朝読書が狂い始めたんだ。朝読書が軌道に乗ったことにより、「生徒たちだけでもできるのではないか」という発想で、先生方の打ち合わせが朝の読書と並行して行われるようになったんだ。僕は、いやな予感がした。案の定、これが大きな失敗となった。静寂が薄れ、マンガ・雑誌の持ち込み、内職やおしゃべり、終いには、抜け出し、妨害行為等のトラブルにまで発展し、それが学校生活全体にまで波及してしまうほど多くの問題を抱えてしまう結果となってしまった。
 いわゆる「荒れた学校」の代名詞がぬぐいきれない有名校として知れわたってしまった僕。僕の役目は、生徒さんが安心して勉強に打ち込める環境を提供すること。どんな強風の時でも、地震などの災害の時でも生徒さんたちをしっかりと守る自信が僕にはあった。しかし、僕の体の中も、骨折、破損、落書き等の治療の跡でボロボロ。生まれたばかりの体とは思えないほどの状況で、毎日痛みをこらえてた。僕の大好きな生徒さんたちに傷つけられることが、僕にとって何よりも悲しかった。

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 そんな重々しい空気を吹き飛ばす提案が職員会議で出された。僕は耳をそば立てて聞いた。「学校経営の柱でありながら、なおざりになってしまっている『朝読書』について、もう一度、みんなで考えようではないか」と。重要な柱でありながら、今までなぜかどこにも明文化された要項もなかった。そこで、まず職員の意識改革を図りながら、本校の「朝読書」の要項を作った。それに基づいて、根気強く、朝読書の指導を続けた。僕も先生方を必死に応援した。しかし、一度ついてしまった悪習はなかなか直らない。朝読書どころか、生徒さんたちを教室に入れておくことすら精一杯という時期もあった。だけど、僕も、先生方も決してあきらめなかったんだ。

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 それから、2年。万全の体制で新年度がスタートできるように、教育課程はもちろん、日課表の見直しも議論を重ね、平成18年度が始まった。僕は、確信があった。今年は行ける!と。僕の予感どおり、静寂が戻った。僕は嬉しかった。生徒さんたちも、先生方も学校生活を共に満喫している。朝読書の時間、僕の周りで生活しているキジ君のファミリーの声に耳を傾けたり、野ウサギ君やリス君がじゃれ合う姿にも視線を送る余裕さえも出てきた。僕は、木ノ下中学校が大好きです。これからも生徒さんたちを守るためにがんばります。


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