本校は、JR高崎線の桶川駅より北北東約3キロの田畑に囲まれ緑の多い場所に、昭和五十六年に開校した。開校当時の生徒数は五八〇名、十四学級であったが、現在は生徒数約三〇〇名の小規模校である。本年度から「ひと・もの・こととのかかわり」をとおして「豊かな心の育成」を研究主題として取り組んでいる。地域や家庭の協力により、風紀を乱す生徒がおらず、家庭的な雰囲気の学校である。
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さて、本校の朝読書の取り組みは、埼玉県の施策「彩の国五つのふれあい運動」の「本とのふれあい」をどのように推進していくかということが始まりであった。職員室内では平成十三年に朝読書の話題が出ており、翌十四年四月には朝読書が始まった。当時は、生徒の学校生活が落ち着かない雰囲気があり、「静と動のけじめ」が課題であったため、朝読書の実施についてはそれほどの時間はかからなかった。
担任は朝の打ち合わせを済ませて八時二十五分に教室へ行く。「さあ、朝読書の時間ですよ。本の用意をして下さい」などと担任が指示する教室はなく、すでに朝読書が始まっている。担任が廊下を歩く足音が校内に響きわたるほどの静寂の中で朝読書が行われている。もちろん教職員も可能な限り読書の時間としている。長い一日の学校生活の中の「わずか十分。されど十分」である。ときどき、この朝読書の時間に来客があるが、静まりかえっている状況を「背筋がぞくっとするような静けさ」だという人もいる。しかし、始めた当時は、本を用意してこなかったり、時間になってもなかなか本を開かなかったりで、本に親しむというような雰囲気ではなかった。現在のように定着するには二年以上かかったように思う。「朝の会の時間が無くなる」「朝自習が定着しているのにあえて読書にしなくても」などの声もあったが、教育効果は大きいということを信じてスタートした。現在は、このような取り組みは十分という時間ではもったいないので二十分にしてはどうかという先生方からの声が校長室に聞こえてくる。しかし、数年かけて定着させてきたことなので、当分の間、今の十分を大事にしようと思っている。
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本校の読書に関する取り組みについては、朝読書の他に図書委員会発行の「ライブラリーニュース」がある。図書委員会の生徒が毎月発行するB4判のもので、お薦めの本の紹介などが感想を交えて書かれている。毎回紹介される本は十冊程度だが、紹介された本は貸し出し希望が多く、順番待ちの状態である。また、本市では小中学校に学校図書館教育補助員が配置されているので、図書館管理運営がしっかりとされている。学校司書教諭と相談をしながら図書の購入計画から廃棄計画までを担当したり、図書館便りを発行したりする業務を行っている。本校の現在の蔵書数は一万二百冊で、生徒一人当たりにすると三十二冊になる。この他に第二図書館の蔵書や学級文庫、学年図書コーナーの本などを含めるとかなりの数になる。
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以上、本校の朝読書を中心に話を進めてきたが、読書には不思議な力があるように思う。それがどんな力なのか正確に捉えるのは難しいが、本校の生徒が落ち着いた雰囲気で学習や部活動に取り組めているのは継続的な朝読書の力が作用しているように思う。このような小さな活動だが、平成十七年四月には「読書活動優秀実践校」として文部科学大臣表彰を受けた。このことは全校の励みともなった。たかが十分、されど十分を大事にして、全校が一斉に静まりかえる朝読書を続けていきたいと思う。 |