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さわやかにしっとりと朝のひととき

佐賀県唐津市 久里小学校
 
 唐津市は、その名の通りアジア大陸に近い港町です。焼き物の技術も大陸より伝えられ、日本三大茶器の一つとして唐津焼きは多くの茶人たちに親しまれています。今でも多くの陶芸家が市内のあちらこちらに窯を開き、高度な伝統技術を受け継いでいます。
 また、唐津市は風光明媚なまちです。江戸時代に防風林として植えられた全長五キロメートルの虹の松原は、海岸線に沿って本当に虹がかかったような美しさです。白い砂浜と緑の松の美しさは「白砂青松」そのものです。
 虹の松原のほど近く、悠々と流れる川(松浦川)があります。その下流のほとりに、創立百五年の歴史を持つ唐津市立久里小学校があります。春は麦の穂が風にそよぎ、初夏にはいちごの香りに包まれ、秋には稲穂が頭を垂れ、四季折々の自然の恵みが子どもたちを守ってくれているような地域です。

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 さて、このような環境の中ではありますが、時代の波はこののどかな田園地帯にも押し寄せてきました。子どもたちの純朴さ素直さは残っているものの、家庭の価値観は多様化し変化してきているように思います。ついつい夜遅くまで起きていたため目覚めが悪い子、外で一人で遊ぶのは物騒だからと家の中でゲームをする子、核家族のためお母さんが家事育児仕事と追われている子、など様々です。
 そこで、久里小学校では、落ち着いた環境を整え、読書に親しむ児童を増やしたいという願いから、平成十二年度より朝の読書を取り入れることとなり、初年度は、週一回のペースでスタートしました。徐々に読書タイムの時間の効果が少しずつ感じられるようになりました。半強制ではありますが、一斉に読書をすることでその後も本の続きを読もうという児童が増えました。また、読書タイムにより心地よい静かな時間が作り出され、一時間目のスタートが静かにできるようになりました。バタバタと朝会を済ませて授業に入ったり、職員朝会のため朝自習等に起きたトラブルを引きずったりしていた他の日より、遥かに落ち着いてスムーズに一日がスタートできるようになったのです。

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 このように、読書タイムの効果が明らかになってくると、他の日も静かな雰囲気で一日のスタートを切らせたいという願いが強くなってきました。
 そして、平成十六年度より朝の時間は毎日読書タイムとし、全校集会や学年集会などは、水曜日の午後、下校前に行うことになりました。
 しかし、一年目は全校全員で取り組んでいるという状況ではありませんでした。本を読むより遊びたい、絵を描きたい…など。しかも、運動好きの児童が多く登校後すぐに運動場に出てサッカーやキックベースボール、一輪車などをして遊ぶ子がいっぱいいます。その子どもたちの気分をどう切り替えて読書に親しませるかが、次の課題となりました。
 そこで、始業開始五分前に放送委員会の児童が全校放送でオルゴール曲をかけ、その間に遊んだ道具の片付け等を行い、自分の本を取り出しそれぞれが自分のペースで読み始めよう…ということにしました。
 また、だれもが気負わずに、読書に親しめるようにと四つの約束を決めました。一、みんなで本を読む。二、毎日続ける。三、好きな本を読む。(漫画以外)四、感想文等は求めない。この四つの約束は教職員の意識の共通理解でもあります。

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 これまでの久里小学校での取り組みは、在籍したすべての児童と職員が創り上げたものです。また、放送委員会担当教諭の協力をはじめ、毎朝の挨拶運動で玄関に立たれている校長先生の声かけも大きな力です。
 このようにして毎朝元気いっぱい遊び、そして心癒されるオルゴールの音で十分間の読書に親しむ久里小の子どもたち。これからもさわやかな汗を流し、しっとりと読書に親しめる久里小学校であり続けたいと思います。

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