「読書は強制して読ませるものではない」、はたまた「学力低下が叫ばれている昨今、ドリル等に当てるべきだ」、「学級づくりのために朝の短学級活動を充実させた方がいい」等々の声をあちこちで耳にします。なるほど、もっともな意見だなと合点がいってしまう方々も少なくないでしょう。現代の風潮をなぞっていくと、極めて説得力のある意見だと手を挙げるのは、一般の人のみならず学校の先生方にもおられると推測します。しかし、それでは「あさどく――朝の読書」が現在二万四千校以上に導入され、約九百万人もの児童生徒が取り組む一大読書運動に発展した理由を説明することはできません。ここで、つたないながらも「朝読」を実践している本校の紹介をしていきたいと思います。
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「おはようございまーす」、だいご小学校では八時十五分から十分間本を取り出し、ただひたすら読書をします。シンプルな四つの原則「みんなでやる・毎日やる・好きな本でよい・ただ読むだけ」に従っています。
@「みんなでやる」…クラス全員が同じ時間に一斉に行う。全員でやることで、一人では読まない子どもも自然に本に向かうようになる。
A「毎日やる」…一日十分という短い時間であれば、子どもたちの集中力も続き、また短時間でも継続することで子どもの読む力は確実に伸び、習慣化につながる。
B「好きな本でよい」…読む本は子ども自身に選ばせる。自分の意志で選ぶことが興味を抱かせ、主体性をはぐくむことになる。
C「ただ読むだけ」…本を読む楽しさを体感することが目的で、子どもたちの心の負担になる感想文や記録を求めないことが継続につながる。
以上が本校の目指すシンプルな『四つの原則』の具体的な実践内容です。
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また、「朝読」を通じて次のような成果も生まれてきました。読書嫌いの子どもが減ってきた。落ち着きが出てきた。読解力がついた。文章力が上がった。学級の立て直しの役に立った。こうしてみるといいことづくめですが、もちろんここに至るまでに紆余曲折はありました。そして、現在も課題は残っています。それでも、「朝読」をやってよかったというのが本校職員の一致した考えです。それは「朝読」は誰のために、何のためにやるのかを職員が理解してきたからだと思います。学校の主人公はもちろん子どもたちであり、子どもたちのためにやります。
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子どもたちのこれからの長い人生には、幸福ばかりではなく、辛く苦しい場面に直面することのほうが多いかもしれません。そのようなときに疲れた心を癒し、再び生きる力を再生してくれるのが、それまで培ってきた「読書力」になるだろうと信じています。学校の教科書では決して教えてくれない「人間力」をはぐくんでくれると信じています。また、子どもたちの中には、「『朝読』がなかったら、本を読むことはなかった」という声もあります。テレビやゲーム、インターネットなど面白いメディアが身の回りにたくさんあります。子どもたちが本の面白さに気づく前に、その前を通り過ぎていってしまう現代の風潮が危惧されており、その最大の改善策であると考えます。
さらに本校では、「読書」が親子の会話を生み出していることに注目しました。家庭で読書を推奨する提案として新たに取り組み始めたのが「うちどく――家読」です。この運動のきっかけは、本校の数名の子どもたちからの提案でした。幸いに高梨保彦教育長、そして綿引久男町長の温かいご支援、大子町から全国に「家読」を発信しようという強い決意があったればこそのスタートでした。町ぐるみの運動が開始され、現在緒に就いた段階です。
学校での「朝読」、家庭での「家読」、この二つの運動の成果が、大子町の人づくり、町づくりに大きく貢献するものと確信しています。『大子町 大人も子どもも「家読」を』を念頭において、これからも関係機関と手を携えて邁進していきたいと思います。
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