君津市は、東京湾・内房に面した市です。新日本製鐵M君津製鐵所の進出により、海岸線は埋め立てられ、昭和40年代から急速に発展しました。緑豊かな自然が残り伝統が息づく東部(山間部)と君津製鐵所に近い都市化された西部に分かれますが、本校の所在は西部地区、周辺に新興住宅地と商店街を抱える市内で一番の大規模校です。昭和50年度に開校し、保護者は他地域からの転入者がほとんどで、価値観は多様化しています。今年度5月1日現在、児童数は750名、職員数は42名、学級数は26(特別支援学級2を含む)ですが、これでも児童数は減少傾向にあります。
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私の本校勤務は、5年目になりますが、着任した頃は、児童が落ち着かず、毎日のように様々な問題が発生し、「生徒指導困難校」と言われていました。そのため、数年間に亘って道徳を研究し、平成15年度には公開研究会を開催しました。しかし、児童の道徳的実践力はなかなか身につきませんでした。
私は前任校(君津市立久留里小学校)、前々任校(袖ヶ浦市立奈良輪小学校)でも読書教育に力を入れてきましたので、本校においても始業時に10分間の「朝読書」を取り入れ、この時間帯に静かなBGMを校内に流してもらいました。このように「朝読書」を取り入れた第一の目的は、児童を落ち着かせ、静かに学校生活のスタートを切らせることでした。はじめのうちは、BGMが聞こえない状態でしたが、今では職員も含めた全員が読書に集中しています(校舎の中にはBGMだけが静かに聞こえるだけです)。
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平成16年度には、創立30周年記念事業として、学校図書館の整備を行いました。会議用の机と椅子を丸みのあるテーブルと椅子に買い換え、カーテンもカラフルなものに取り替え、36畳敷きの畳コーナーを設置しました。また、児童図書購入費として別に100万円を出してもらいました。
また、これまでも「読み聞かせ」を中心とした読書ボランティアの方も数名いらっしゃったのですが、新たな読書ボランティア組織を立ち上げました。現在では30名を超える方が活動をされています。
君津市としても司書補助員制度をスタートさせ、平成18年度には市内の全小学校(18校)に、今年度からは全中学校(11校)にも司書補助員が配置されました。
そして平成18年度から司書教諭を担任から外し、算数のTT(チームティーチング)担当としました。このことが本校の読書教育推進に大きな効果を生みました。司書教諭は学級事務が無くなったため、その時間を図書館業務に専念できるようになったのです。司書教諭は、司書補助員や読書ボランティアの方々を支援しながら、おはなし会や読み聞かせ、図書館環境の整備、図書の修理等の活動を推進しています。司書教諭による始業前の朝の貸し出しも始まり、図書館には毎朝児童の長い列ができます。「親子での読書週間」を設定し、家庭ではテレビを消して親子で読書をする取組みも行っています。
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このような取組みによって、児童の読書量は3年前の3倍以上に増え、さらに伸び続けています。児童はすっかり落ち着き、今では「生徒指導困難校」の汚名を返上することができました。人の話をきちんと聞けるようになり、学習にも集中して取組めるようになったため、学力も徐々にですが、向上してきました。
児童がこのように変わってきたのは、「朝読書」をはじめとする読書教育がすべてではありませんが、大きな要因になっていることは間違いないと思っています。
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