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「朝の読書」との出会い

北海道・岩見沢市立 岩見沢緑陵高等学校 教諭


「朝の読書」の実施を考えたきっかけは遅刻の増加であった。一年生次の二学期。学校にも慣れ、雪も降り始めると、気の緩みからか遅刻する生徒が増えた。 何とかしなければと考え、個別によんで諭すなどしたがあまり効果があがらず、どうしたら良いものかと考えていた。 そんな時、立ち寄った市立図書館の新刊コーナーに林公先生の『朝の読書実践ガイドブック』をたまたま見かけ、ふと手に取り数ページ開いてみた。 なかなか良さそう。借りてすぐに全て読み、その数日後には自分でもやってみようと決心していた。
しかし、年度途中から始めたことと、自分自身の読書のレパートリーが歴史物・ルポルタージュ物に偏っており、生徒にあった本の紹介がなかなかできず、 「朝の読書」はしているが形だけという状態が続いた。

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春になり、新しいクラスでも『朝の読書』を続けた。ほとんどの生徒は一年次に河本クラスのみで「朝の読書」を実施しているのを見ていて、 何で自分達だけが「朝の読書」をやらなくてはいけないのかという不満を持っていたようだ。 しかし、テスト一週間前には中止するといったようなルールを生徒と共に決めたことや、本の紹介を数多く行うということにした結果、 一学期が終わる頃、読書に対する生徒達の不満は少なくなっていった。それどころか生徒同士で本の紹介をしたり、 気に入った本の回し読みをするといった光景が見られるようになった。
さらに色々な変化が現れてきた。まずは生徒の成績が良くなってきたこと。これは読書によって集中力がついたのか、 本の中から色々な世界を垣間見て刺激を受けたのか、はたまたクラスにたまたま優秀な生徒が集まっていたのかどうかはっきりとはしないが……。 しかし『実践ガイドブック』に書かれたような変化が自分のクラスにも現れて正直言って驚いた。 次に今までの生徒の仲良しグループを越えたところで本の回し読み、紹介が行われるようになったことである。 「あれっ、この子とこの子が話をしている、何を話しているんだろう」と聞き耳を立ててみると、本の話題のことが多かった。 また「朝の読書」を仕掛けていった私自身の読書の幅が広くなったことも変化の一つである。

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しかし変わらなかったこともあった。遅刻の数。これは卒業まで全校一の数を誇っていた。 担任が他のクラスよりも相当早く来て遅刻を厳重にチェックしていたということもあるのだが…。それから私自身が図書の係でもあったので、 図書館の貸し出しが増えるかと期待したが、これも変わらなかった。借りるよりも、書店で本を買ってくる生徒が多く、中には一日一冊ずつ買っていた猛者もいた。 猛者といっても女の子で、春先には朝の読書がいやでいやで学校をわざと遅刻してきた生徒なのである。
また、三年生の時には、広島県立可部高校・高知商業高校と本の紹介をしあう「心の虹」という交流を行った。先方の先生方には多大なご苦労をかけたが、 生徒達は他校の高校生と本のみならず心の交流ができて、こんな本があるんだ、こんな考え方があるんだといった良い刺激を受けていた。

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二年半の「朝の読書」が終わる卒業を目の前にして生徒達に朝の読書の感想を書いてもらった。
「今までマンガしか読まなかったけど、字ばっかりの本を読むようになった」
「とにかく最初はいやで仕方なかった読書だったが、銀色夏生にはじまって、苦手意識の強かった小説の面白さも知ることができた。 看護系などの本もたくさんよんだので知識も増えたし、そこから色々なことを感じて考えることができた。 また、クラスのみんなと話をするようになったのは本の貸し借りを通じてということも少し言える気がする」
読書を通じて、表面的な部分だけでなく生徒達の心とも触れ合う時間を持てたことは私にとっても宝物となった。


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