| |  | 親愛なる読者諸兄へ
まことに申しあげにくいことながら、あなたがその手につかんでいるこの本は、非常に不愉快な本である。ここに語られるのは、可哀想な三人の子供たちをめぐる可哀想な物語だ。チャーミングで利発であるにもかかわらず、ボードレール家の三姉弟妹はイバラだらけの、それはもうみじめな人生を送っている。その可哀想なことといったら、ビーチで遊んでいて、世にも恐ろしいニュースを聞かされる最初の1ページからはじまって最後のページにいたるまで、全編これ不運のオンパレード、姉弟妹の背後には常に災厄がひそんでいるのだ。さよう、彼らは不運を呼びよせる磁石、と申しあげても過言ではあるまい。 この短い一冊だけで、三人の幼い姉弟妹は強欲にして不気味な悪党にしいたげられ、ちくちくする服を着せられ、壊滅的火災に見舞われ、彼らの財産を奪おうとする悪だくみに翻弄され、朝食に冷えたオートミールを食べさせられる、といった具合に、次々に不幸な目にあわされる。 この不愉快な物語を書くのは、わたしの呪われたさだめである。しかし、こういう話しは我慢ならん、というのであれば、どうか遠慮なくこの本はうっちゃって、幸せ満載の読み物を手にとることをおすすめする次第である。 |