はじめに
私の碁は厚い碁だと言われることも多いのですが、私自身は必ずしもそうは思っていません。意外に思われる方もいるかもしれませんが、特に厚く打とうと意識しているわけではないのです。ただし普段の手合を打つときは、常に全局のバランスを考えながら、急につぶれたりしないように、あまり無理をしないで安全に打とうと心がけています。険しくごちゃごちゃとした難解な変化になるのがあまり好きではないので、結果として厚い碁形になっているのだと思います。あまり豪快に勝ちたいと考えることもなく、全体のバランスを考えながら、自分にとって自然な手を打った結果として、最終的に勝てればよいのです。そう打って負けるのなら仕方がないくらいに思っています。そういう打ち方が自分にとって自然なのです。これは生来の性格からくるものかもしれません。
本書で取り上げるテーマ図は私の実戦を題材にしたものですが、もちろんプロの碁ですからアマチュアの方にとっては難しい内容も含まれているかもしれません。いろいろな局面(テーマ図)についてこのような打ち方や考え方があるのだと、一つの参考にしていただければ嬉しく思います。
我々プロと違い、アマチュアの皆さんは勝敗が生活に直結するわけではないので、勝ち負けは二の次にして、囲碁を存分に楽しんでいただきたいと思っています。そのためには肩の力を抜いた自然体で碁盤全体を見渡しながら、自分の好きな構想を描き、自由にのびのびと打って欲しいと思います。私の碁においてもそうなのですが、なるべくわかりやすい手を打つということをお薦めします。
本書があなたの棋力向上のお役に立てば嬉しく思います。 |
2006年4月 九段 高尾紳路 |
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