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ルバング島から帰還した小野田寛郎さんとの30年の暮らしを、妻の視点から綴った本。
帰還のニュースを見た時、直観的に「この人なら!」と結婚を夢見たという。
花嫁として未知の国ブラジルへ・・・。
この本を読むと、現代日本のぎくしゃくとした“夫婦関係”について改めて考えさせられます。
私は戦友になれたかしら
小野田町枝/著
出版社名/清流出版
本体価格/1,600円
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著者のことば

30年戦争を戦いルバング島から日本に帰還した小野田寛郎さんのニュースは、世界中に発信されました。その益荒男ぶりをテレビで見たのが、私の人生の大きな転換点となりました。偶然が重なって寛郎さんと結婚し、ブラジルに移住することになったのですが、再び日本の土を踏むことはない、との悲壮な決意での旅立ちでした。

牧場の開拓は日々トラブルの連続。慣れない気候・風土に加え、食べ物も違います。近所に知る人もいない広大な荒野にポツンとあるだけの一軒家では、喧騒の東京がひどく懐かしく感じられたものです。これまでの人生でおよそ接したこともない、ダニや毒ヘビ、ワニ、蜂などの動物もいます。もちろん、電気も通じていませんでしたから夜はランプの生活。灯に集まる羽虫のすごさにも驚かされました。死んだ羽虫が、一晩でバケツ一杯にも。私の不注意で牧場の牛に襲われて、九死に一生を得たこともありました。

牧場開拓も私の予想とは随分違いました。というのも、7、8年というもの牧場からの収入は一切なく、お金は出てゆくばかりなのです。いかに資金力が必要なのか実感させられました。主人の印税を使い果たし、私が持参したお金も底をついて、明日の食べ物に困るほど困窮したこともあります。主人が考えた窮余の一策が、ブルドーザーによる出稼ぎでした。これで生活を支えたのも今にして思えばよい思い出です。

ポルトガル語に堪能でない私たちが、使用人を使うことの難しさもいやというほど体験しました。雇ったばかりのメイドに大金を盗まれたり、主人も私も好感をもっていた牧童フランシスコが、何人もの人を殺した殺人者だったという恐怖も味わいました。

現在、成田空港を超える広さをもつ小野田牧場には、千八百頭の牛が悠々と草を食んでいます。のどかな風景に見えますが、ここまでくるには、ここに書き表せないほどの苦労もしました。ただ、どんな苦労も耐え忍べたのは、主人がいつも庇護してくれたこと。これがなかったら我慢できずに日本に逃げ帰ったかもしれません。

ある週刊誌のインタビュー記事で、主人が私のことを、「格好の戦友を得た」と言っています。これを知ったとき、私は本当に嬉しかった。何よりのプレゼントであり、私にとっての勲章だと今でも思っています。

はじめに
第1章 偶然の出会い
牧場の家族
たび重なる偶然
ブラジル青年との出会い
小野田牧場訪問
マンゴーの樹の下で
僕の結婚は金じゃない
牧場は七年間無収入
惚れるとは、惚けること
第2章 遠い国ブラジルへの旅立ち
出発の朝
ポルトガル語が話せずに
ハチの襲撃
忘れられないダンス
荒野の新婚生活
三か月ともたない
第3章 未知の世界
ジープで仕事探し
心豊かな人々
マリアとフィリンニャ
ブルドーザーの出稼ぎ
相次ぐ招からざる客
観光地のように家族連れが
動物園のサルじゃあるまいし
第4章 大自然と折り合いながら
一升瓶の湯たんぽ
ダニは仇?
何時の便ですか?
マットグロセンセらしく
狩猟犬の血は騒ぐ
牛と赤い服
戦場の記憶
涙の誓い
ヘビと入浴
牛との大格闘
第5章 牧場主見習い
牧童フランシスコ
フランシスコの噂
留守番が恐い
フランシスコの過去
予期せぬ再会
初めてのお手伝いさん
パラープラ・エスコリーダ
ウィスキーの瓶が空っぽ
高い月謝
しっかり者のイザベル
デウス アジウダ
ハチに刺されて指輪を切る  
第6章 移住地への仲間入り
遠くの親戚より近くの他人
先駆者たちの苦労
自然の花材でいけばな
こんにゃくは最高のおもてなし
移民の日
オブジェを捧げよう
南マット・グロッソ州の夜明け
たくましい妊婦たち
お坊さんのいない葬式
第7章 永遠の灯
日本語学校
子供たちとの勉強
日本の遊戯を見せよう
水兵さんの帽子と手まり
電化に向かって
電気が点いた
友、遠方より来る
心の開拓
サンパウロの仲間たち
お財布を忘れた
第8章 空白の三十年
三十年の真実
朝鮮戦争とベトナム戦争
大いなる過ち
勝ち組・負け組
日本への恩返し
自然塾のはじまり
中野学校の賢婦人たち
ルバング島訪問
夫を生かしてくれた大自然
島の女性と子供たち
第9章 四半世紀が過ぎて
不妊治療と息子
学生たちとの語らい
心のふるさとバルゼア・アレグレ
移民たちの足跡
私の生徒たちのその後
恩人たちはもういない
おわりに  人生の「戦友」
あとがき

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