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「愛と死をみつめて ある純愛の記録」
大島みち子著 河野 実
紹介者 大和書房 編集部 白井麻紀子さん

 
手紙にこめられた究極の純愛

 本書は、不治の病と闘った若い女性とそれを支えた恋人との実話であり、東京と大阪に離れ、会うことはおろか、電話すらままならない二人の間を結んだ400通の往復書簡です。
 昨年の10月に、編集長からいきなり「大和書房にとって財産の本が12月に復刊されるから、とにかく読んで」とドサリと初版のコピーを渡されました。二段組で、しかも小さな文字がギッシリ。
 『愛と死をみつめて』という名前は、両親から聞いたことがありましたが、私が生まれる15年も前のものですし、このボリュームだし、なんだか大変そうというのが最初の感想です。
 でも、読んでいくうちに、だんだん周りが見えなくなり、私は時にミコさんになり、時にマコさんになって、隣の先輩に「どうしたの?」と驚かれるほどに泣いてしまいました。
 21歳の女性が「顔の半分を削り取る手術」を決心することがどれだけの覚悟を必要としたか、その胸の内はわかりませんが、でもそれは「生きる」ための決心ではなかったと思います。事実ミコさんは、手術前に一度は自殺を決意しているのです。
 それでもマコさんの必死の説得で、手術を受ける決意を固めたのは、もう、ただただ、「マコさんに会いたかったから」。いえ、ミコさんの場合はもっとささやかな望み、「手紙を書き続けたかったから」ではないでしょうか。
 こんなささやかな望みすらかなわなかったミコさんは、それでもこう言います。
 「もし病気していなかったら、マコとは永遠に会っていなかったでしょう。そう思う時、たとえこうなったにしても、病気して幸せだったのではないかしらと思うのよ」
 新幹線、携帯電話、メール……今なら二人をつなぐものは沢山あります。でも、手紙がつないだからこそ、二人の愛は現代では考えられないほど、ひたむきで純粋なものです。
 当時を知る方だけでなく私と同世代の人にも、ぜひ読んでいただきたいと思っています。


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