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「チョッちゃんは、もうじき100歳」
黒柳 朝 黒柳徹子聞き手
紹介者 主婦と生活社 編集部 鈴木美保さん

 
最初で最後の母娘対談

 初めて朝さんにお会いしたのは、昨年の10月でした。年齢の近い祖母と比べても、95歳とは思えないお元気さで、お肌もつやつや、お声に力があって、ご返答も明快、即断即決の方でした。何よりも感服したのは、一度だけ同じ話を繰り返されたときに、「先ほども話したわね」と、お断わりを入れたことです。
 徹子さんの脳のMRIを診た先生が、「きれいな脳なので、亡くなったらここに置いておきたいぐらい」と感想を話し、その後、朝さんの脳も診て、驚くほどきれいで、「この脳だから、娘さんの脳もきれいなんだ」と思わずもらした、というエピソードが本の中に出てきますが、まさに、立て板に水のように話し、頭の回転が速い徹子さんの、正真正銘のお母さん、というのが、お会いした感想です。
 この本は、当初、朝さんおひとりの語り下ろしエッセイを予定していましたが、急遽、徹子さんが、インタビュアーを自らかって出てくださり、初めての母娘対談が実現しました。番組での共演を断わり続け、頑なな意志でこれまで一度も親子で仕事をしてこなかったおふたりでしたが、ある日、徹子さんが、「番組で30年間もインタビューをしてきたのに、家族には面と向かってインタビューしたことがない。それなら、母が100歳になったらインタビューしてみよう!」と思い立ち、それに対して、朝さんが、「やるんなら、すぐやったら?」と答えて、始まりました。残念ながら、出版直前に朝さんが亡くなられたため、最後の本になってしまいました。
 対談は、朝さんと徹子さんの完全プライベートな形で行われました。テープをいただくたびに、名インタビュアーと、娘に負けないユニークな朝さんのトークに、笑わされたり、ほろりとさせられたり。さながら「徹子の部屋」のようでした。家族のことを心配し、細やかに愛する一方で、いい具合にちゃらんぽらんで子を突き放している、それが朝さんの魅力。徹子さんの母を想う気持ちも、対談からじんわり伝わっていて、理想的な親子の形を感じます。
 家族を想う、すべての人に読んでもらいたいと思います。


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