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「花に嵐の映画もあるぞ」川島雄三著
紹介者 河出書房新社編集部・西口 徹 さん

 
還ってきた男
もっとも斬新で、センスにあふれ、妙ちきりんな、面白い映画をつくって逝った、稀才映画監督・川島雄三が、その短い生涯に遺したエッセイ、戯文、俳句、手紙、自作解説、シナリオ、対談鼎談etc.を収録した初の著作集。
 映画のとんでもなさが偲ばれるのに加え、エッセイなどでは照れ性からくる抑制されたストイシズムが繊細だ。
 タイトルについて蛇足ながら補いますと、川島雄三が愛した漢詩人・于武陵の「花ニ嵐ノタトエモアルゾ サヨナラダケガ人生ダ」(井伏 二超訳)からのいただきで、今春刊行の藤本義一著『川島雄三、サヨナラだけが人生だ』とつなぎました。(さらに秋には盟友だった助監督・シナリオライター柳沢類寿との共著として『柳よ笑わせておくれ』も準備中)
 シナリオは二本で、ともに単独執筆。一本は、初期・松竹時代の人情映画『とんかつ大将』で、流しのヴァイオリン艶歌師役の三井弘次がいいんですよねぇ。三井弘次、ご存じですか? 小津の『浮草』、木下の『カルメン故郷に帰る』、黒澤の『どん底』などでもいい味だしてますよ。また、矢野誠一さんの文春文庫『酒と博奕と喝采の日日』にもいいエッセイで触れられてますので、こちらもぜひ。
もう一本は東京映画『グラマ島の誘惑』。名匠スタンバーグの『アナタハン』のパロディでもあり、撮影はともに岡崎宏三なのも映画的な出会い。原作は諷刺劇作家・飯沢匡の舞台台本「ヤシと女」で、朝鮮人女性が沖縄女性に変更されていることなど興味深く、天皇制批判も愉しい。また監督は、ロケで使ったB29の残骸を市中引回しの刑に処したという。
 最後に、川島作の、その生涯を象徴するような一句を掲げておこう。「背のびしてミューズの蹠をくすぐらん」。

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