「的場さん、今の世の中、詩集は売れませんよ」
昨年の春、星野さんのご自宅にお伺いし、これまでの作品の集大成となる『星野富弘全詩集』の企画をご提案した際の、星野さんの言葉です。
これまで刊行された星野さんの五冊の詩画集は、文字通り詩画が一体となり、多くの方々に筆舌に尽くせない深い感動と勇気を与え続けてきました。その波は国内はもとより海外にまで広がっています。五冊の累計実売部数合計は五百十六万部を突破。さらに富弘美術館開館後、十三年七か月間の美術館訪問者数は約四百七十万人に達したことからも、星野さんの作品がいかに多くの人々に広く愛されているかをうかがい知ることができます。
その大切な詩画から詩の部分のみを取りだし、活字で詩集を編むということは、星野さんにとって、そしてそれらの作品を愛してこられた読者の方々にとっては、慈しみ育んだ我が子の体を切り裂かれるほど辛いことであろうことは、想像に難くありませんでした。
しかし、詩画作家・星野富弘さんから距離を置き、詩人・星野富弘さんとして改めて活字で編まれた詩を読み返すと、素朴な言葉の中に星野さんの声が生き生きと響き、優しく心と体を包み込んでくれます。まさに新しい星野ワールドの誕生です。
「詩集といえば地味ですが、星野さんの言葉の持つ強さが読者の心に深く染み入り、詩画集同様、必ず愛読され続ける一冊になります。若い人もバッグに入れて手軽に持ち歩け、どこでも読めるサイズにしましょう」同席した阿部社長(当時立風書房・現学研雑誌第四編集部長)ともども力説しました。
幸いにも星野さんより快諾いただき、新富弘美術館オープンに合わせ『星野富弘全詩集』は二分冊として上梓することができました。T巻(百五十二篇収録)のカバーには「花と」、U巻(百五十四篇収録)には「空に」の文字を、星野さん直筆の墨書で飾っていただきました。「花」と「空」に想いを馳せる星野さんのお気持ちが、ひしひしと伝わってくる書です。
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