『仕事も人間関係もうまくいく 「気遣い」のキホン』の
三上ナナエさん
インタビュアー 「新刊ニュース」編集部
「新刊ニュース 2014年12月号」より抜粋
── 初のご著書『仕事も人間関係もうまくいく「気遣い」のキホン』が、今年2月の発売以降、累計8万部を突破されたということですが、現在のご心境というのはどのような感じでしょうか。
三上 私が書いた本を、知らない所でどなたかが手にとって、お金を払って下さって、読んでもらえているということが、すごい「奇跡だな」と感じています。また、内容は私が航空会社の新入社員時代に体験した失敗例を多く書いているのですが、読者の方から「実例を挙げてそれに対してどうしたらいいかという対処法が、小話のように書いてあるのが良かったです」という感想や、同じように悩んでいる方から「自分のことが書いてあるのかと思いました」というような感想を頂いて、自分自身が救われたような気がしています。「誰かの役に立てたのかな」という、感謝の気持ちでいっぱいです。
── この本をご執筆されたきっかけを教えて下さい。
三上 私は現在、マナーやコミュニケーションなどの講師をしている傍ら、ブログを書いているのですが、それをすばる舎の編集の方が見て下さって『「人間関係を良くする」とか「人に好かれる」というような感じのテーマで本を書きませんか?』というご依頼を頂いたことがきっかけです。ちょうど私の誕生日にメールでお話を頂いたのですが、最初は意味が分からなくて、何回か読んでようやく「本の執筆の依頼だ!」とビックリしました。まさにサプライズのプレゼントでした。
── 本を執筆されるに当たり、どのような方を対象読者としてイメージされましたか。
三上 基本的には対象読者を絞らず、幅広くということでしたが、やはり主な読者は20代〜30代前半の女性で、ビジネス・シーンで役立ててもらえることをイメージしました。今の20代〜30代前半の方は「こうやって」と言えば、素直にやってくださる方は多いですし、気の利く方も多いのですが、「どうしてそれをやるのか」と理由を知りたがる人が多いと思います。私が新入社員の頃は「こういうものだよ」と言われれば「そういうものなんだな」と言われた通りにやって、10年後ぐらいに「あ、これはこういう理由でこうやるのか」と自分で気付いていく感覚でした。でも今は「どうしてですか?」という質問が多いという話を、今もCAである先輩や同僚などからよく聞きます。でもそれは逆に理由が分かればやる気になるということですから、講演や研修でも、必ず理由をはっきりさせてしっかり伝えるようにしています。この本でもそれを大事に書こうと思いました。例えば、挨拶も大事だということは分かりきっていることですけれど、自分から先にするのが挨拶で、相手からされた挨拶に対する挨拶は返事にすぎない、と伝えると「そうか、だから自分からやった方がいいのか」と、納得してもらえる。そういう工夫というか、若い方が知りたいと思うことを意識して書きました。
── その他に読者に読んでもらうための「気遣い」というか、読みやすいように心掛けたことはありますか。
三上 なるべく失敗談は自分の話を紹介して、良い話は友人がこうしてくれたという話を選ぶようにしました(笑)。このテーマに決まってから、普段も「気遣い」って一言で言うとなんだろうと考えるようにしていたのですが、結局は「あなたは重要な人ですよ」というメッセージのようなものだと思います。ただ「あなたは重要な人です、大切な人ですよ」と思っているだけでは伝わらないので、どうしたらそれを形として伝えられるか、一個一個、ほんとに小さなコツとか事例、エピソードを集めようと心掛けました。それから指導する立場の人からも「どう指導していいか分からない」という話をよく聞いているのですが、「ストンと腑に落ちる説明」とか「心に刺さる言葉」というのは必ずあると思っていますので、講師としての経験の中からそういう言葉を丁寧に探すようにしました。
── 原稿の執筆から本が出来上がるまで、大変だったことはありますか。
三上 そもそも自分でいいのか、この内容・品質でいいのかな、と思う時はありましたけれど、本当に夢中になってやっていたので、あまり大変と感じたことはなかったかもしれません。ただ締め切りを守らなくては、迷惑をかけないようにしなくては、というのは思いました。それよりも、自分で書いたものを読んでみると主語がなかったり、少し説明が足りなかったりして、何かよくわからないなぁということがありましたが、編集のプロの目線が入ると劇的に変わることにびっくりしました。ここをこう直すと見え方も伝わり方も全然違うものが生まれるという感覚は新鮮でした。
── 本が出版されて、周囲の方々の反応はいかがでしたか。
村 エピソードで紹介した人たちは「やっぱりちょっと恥ずかしいけれど、ありがとう」という感じでした。あとは、講師の仲間でご自身も本を10冊以上出している方が読んでくださって、私のような、すごく気弱な何もできなかった人が頑張ったというような(笑)、成長記録みたいに見てくださいました。この本で紹介している一個一個のテクニックがどうこうというより、こんなに自信のなかった人が何かを形にした、小さいことも少しだけ勇気を出していけば、いつの間にか景色が少し変わるかなというようなことを読み取ってくださったのか、褒めていただき、広めてくださいました。
── 「小さな秘訣=vとして気遣いのコツが37個紹介されていますが、実際これを身に付けるにはどうしたらよいでしょう。
村 章立てはもちろん、要所要所に図を挿入して、読みやすい構成になっていますから、何度も繰り返し読んで頂ければと思います。「今日はここをやろう」とか「今週はここを頑張ってみよう」とか、少しずつ目標を立ててやると「あ、変わってきたかも」と思えるかなと。この本で紹介している37のコツ全部をすぐに身に付けるのは本当に難しいと思います。知っていることと実際にしていることにはすごく差があって、無意識に出来るレベルになるには一つのことでも2・3ヶ月はかかるのではないでしょうか。すごく根気がいることですが、まずは自分をがっかりさせないということが第一段階。人のためというより、まずは自分を裏切らないということ。そして小さいことを積み重ねていけば、自分に対する肯定感が出てくるはずです。そういうところから「次はこれをやってみよう」というように、少しずつやりたいことも増えてくると思うので、その小さな一歩にもこの本はオススメです。
── 全体を通して「気遣い」とはどういうものか、「気遣い」の大切さを伝える内容ですね。
村 「気遣い」ができる人はすでに気付いていることだとは思いますが、誰かに薦められて読まれた方は「なんか、グサグサ刺さるなぁ」という感想を持たれるみたいです。「いくら仕事が速く正確にできても、気遣いができないだけで、評価は掛け算でゼロになる可能性がある」という話を読んで「もしかして…」って思ったと言われたことがあります。でも今は昔と違って、すぐにパワハラ≠ニか言われてしまうので、相手の振る舞いに忠告しずらいという話もよく聞きます。なので、気付きたい人も、気付かせたい人も、ぜひ読んで頂きたいです。今、周りに何も言われないからイイって思っていると、いつの間にか必要ない人になってしまう可能性があるわけです。昔は本当に細かいことまで、周りの人が言ってくれました。そういう「お節介」に近い「気遣い」が当然だった時代があったので、この本でそういうことも伝わったらいいかな、とは思います。お節介な声掛けも、「あなたが大切だから」という思いが込められていれば気遣いになります。だからこそ「気遣い」はとても大事なコミュニケーション・スキルであると思います。
── 「気遣い」をするのが苦手という方に何かアドバイスはありますか。
村 まずは、勇気を出して一歩踏みだしてみる。なんでもいいので、やってみることですね。「気遣い」は、相手に好かれようと無理をするのではなく、心配をかけないようにしよう、と思えばできると思います。好かれようと思っても、それは相手が決めることなので、分からないし、結果を求めると疲れてストレスになります。まずは、相手を不安にさせないということだったら何ができるかを考えてみて下さい。
── この本のここを読んで欲しい、一番重要なところというのはありますか。
村 一番届けたいメッセージは、自信がなくてもやってみるということです。最初は、誰もが自信ないと思います。でも自信ができてからやってみるのではなく、やってみることが一つずつ自信になっていく。例え失敗しても、やってみることで得られることがあります。「あれ? ちょっと空振ったかな」ということがあるかもしれませんが、それは次につなげることが出来る情報が得られたと考えることですね。やってみて、それを全て糧にしていくことです。
── この本は『「気遣い」のキホン』ですが、「実践編」「応用編」などのご予定も含めて、今後の活動について教えて下さい。
村 基本的にはこれからも講師として活動しますが、「実践編」「応用編」は、本にするお話を頂けたらいいなとは思います。あとは、私に似た、ちょっと気弱な人の背中を押すというテーマで、何か書いてみたいなというのはあります。それから今回、本を出したということで、女性のセカンドキャリア的な内容で、会社を辞めて、次は好きなことや自分の理想で働きたいという人に向けて話をして欲しいという依頼をいただいています。
── 「新刊ニュース」の読者に向けてメッセージをお願いします。
村 この本は、ビジネス・シーンはもちろん、大事な人やお子さんとのコミュニケーション、地域の活動などでもネタとして何か参考になるところがあると思います。この本を読まれて、ぜひ小さな一歩を踏みだして、少しずつ景色を変えていただけたらと思います。
(十月二日、東京都豊島区・すばる舎にて収録)
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