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『へなちょこ手づくり生活』のたかぎなおこさん
インタビュー・構成 「新刊ニュース」編集部

「新刊ニュース 2014年1月号」より抜粋

たかぎなおこ(たかぎ・なおこ)

1974年三重県生まれ。美術系短大およびデザイン専門学校卒業後、名古屋市のデザイン会社を経て1998年に上京。2003年『150cmライフ。』でイラストエッセイデビュー。著書に『アジアで花咲け!なでしこたち 2』『まんぷくローカルマラソン旅』『うちの犬、知りませんか?』『愛しのローカルごはん旅 もう1杯!』『マラソン2年生』『ひとり暮らしな日々。』など多数。現在、『へなちょこ手づくり生活』(白泉社)が好評発売中。

へなちょこ手づくり生活

  • 『へなちょこ手づくり生活』
  • たかぎなおこ著
  • 白泉社
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まんぷくローカル マラソン旅

  • 『まんぷくローカル マラソン旅』
  • たかぎなおこ著
  • KADOKAWA
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うちの犬、知りませんか?

  • 『うちの犬、知りませんか?』
  • たかぎなおこ著
  • 文藝春秋
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愛しのローカルごはん旅 もう1杯!

  • 『愛しのローカルごはん旅 もう1杯!』
  • たかぎなおこ著
  • KADOKAWA
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ひとり暮らしな日々。

  • 『ひとり暮らしな日々。』
  • たかぎなおこ著
  • 主婦と生活社
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ローカル線で温泉ひとりたび

  • 『ローカル線で温泉ひとりたび』
  • たかぎなおこ著
  • KADOKAWA
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はじめてだったころ

  • 『はじめてだったころ』
  • たかぎなおこ著
  • 廣済堂出版
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── 現在発売中のご著書「へなちょこ手づくり生活」の執筆の動機についてお聞かせください。

たかぎ 雑誌『MOE』の編集の方から「連載をしませんか」というお話を頂いて、何のテーマにしようかと考えていたんですけれど、元々私は『MOE』の読者で高校生くらいの頃からよく買っていて、正統派のかわいらしい雑誌というイメージを持っていたので、これまで描いてきた日常ネタやグルメネタよりも、ちょっとかわいいテーマにしようと思いました。そこで、自称DIY好き≠ネので、ハンドメイドだったら多少かわいいかな、と思って決めました。実際にはいろいろと案が出てたんですけれど、『MOE』にあったテーマということでハンドメイドで落ち着きました。

── タイトルに「へなちょこ」とつけられたのはなぜでしょう。

たかぎ 実際、一人暮らしの生活の中でご飯を作ったり家具を手づくりしたりするんですが、全然上手ではないんですよ。器用じゃなくて。でも、いわゆるハンドメイドの本≠ニいうのは、とても上手でお手本的な感じがしますが、私は素人が独自にやってみるっていう感じのハンドメイドだったので、タイトルでそれがわかるようにしないと、と思ったんです。それで器用じゃない≠ニいうのをもっとかわいい言い方で表せないかと友人に相談したら「へなちょこってどう?」と言われて、採用しました。

── タイトルは「へなちょこ」ですが、道具や材料など、かなりこだわっていますね。

たかぎ こだわりというほどのものではないのですが、一応写真も載せようと思っていたので、フォトジェニックじゃないといけないかな、という気は遣いました。たとえば「メロンクリームソーダづくりの巻」の時には、かわいいグラスを探したり、いい写真を撮りたくて晴れの日のお昼ごろに作ったり、写真を撮るのが台所だったので拭き掃除をしたり(笑)。材料は新しいのを買うばかりじゃなく、なるべく家にあるものを再利用できるようにもしました。

── イラストだけでなく制作日誌のページには写真も多く掲載されています。

たかぎ やはり写真で見た方が分かりやすいこともあると思います。あとは、写真を載せることで、自分にプレッシャーをかけるというか、ちゃんと作ろうっていう気持ちになるというか。イラストだと、ちょっと上手にできた風にも描けるので(笑)。ただ、制作に夢中になってしまって、写真を撮り忘れてしまうことが多くて、完成後に「あの時の写真が全然ない」とか、夜中に作ることが多いので写真が暗いとか、「ばくだんおにぎりづくりの巻」の時は手がベタベタで写真が撮れなかったとか、同じような写真しかない、なんてこともありました。

── 様々なジャンルの手づくりものが14点掲載されていますが、一番のお気に入りは何ですか。

たかぎ 気に入っているというか、一番役に立っているのは、頑張って作ったコピック(※1)の棚です。コピックを入れるために、ぴったり収まるように、ちゃんと計って設計図も作りました。あの中では一番時間とお金が掛かっています。私は手づくりの中でも木製品が一番好きなのですが、木製品ばかりでは『MOE』の読者さんに作りたいと思ってもらえるかわからなかったので、裁縫や食べ物などいろいろなジャンルに挑戦してみました。

── 苦手なジャンルや失敗などはありましたか。

たかぎ 裁縫は苦手で…。裁縫が得意な友達に手伝ってもらって作りました。失敗というと、この本の中では「コースター」ですかね。出来は良かったんですが、ちょっとガタガタしていて高さもありすぎたので、今は花瓶などを置いています。本から離れると、陶芸教室に通っていた時にお皿をいっぱい作ったんですけれど、どれも歪んでいたり、練りが甘くて欠けてしまったものが、捨てるに捨てられなくて、今負の遺産≠ンたいになっています。気に入っているお皿も何個かあるんですけれど、重たいし使いづらい。ただ今回「苔玉づくりの巻」で、昔作った器が活用できました。

── 連載にあたって、ご苦労されたことはありますか。

たかぎ 連載している時は、準備や制作の期間があるので、大体2ヶ月先を考えて作るものを決めていました。夏に「Tシャツを作りたい」って話をしても、出来上がるのが秋になってしまうからダメだ、と。やっぱり読者さんの季節感の方を優先したかったので。「ばくだんおにぎり」の時も「おにぎりを作って山に登る」ということになったのですが、11月号の掲載なのに実際はまだ真夏日の中での登山だったので、始発の電車に乗って早朝登山にしようということになり、朝3時に作りました。

── 連載や本を読まれた読者の方からの反応、反響はいかがでしたか。

たかぎ 今はツイッターで、読者さんが作ったものを写真に撮って送ってくれるんですよ。そうした中でも「ばくだんおにぎり」と「メロンクリームソーダ」は多かったですね。食べ物ネタはやはり反響も大きいです。しかも、かなり上手なおにぎりがあったりして(笑)。ちなみに連載第一回目は「黒板」でしたが、読者さんからの反応は結構、良かったんですよ。さすがに「作りました」っていう報告はまだもらえていませんが「黒板ペイント」(塗ると板が黒板になるペンキ)というのが斬新だったみたいです。こういうものが、こんな風に作れるんだ、っていう感じで。

── 連載の第一回に「黒板」を決められたのはなぜですか。

たかぎ その時、スケジュールの把握が出来ていなくて、本当に黒板が欲しかったんです。でも最初はプレーンの黒板を買ってきて、自分で好きなように線を書くだけでスケジュール表ができると思っていたのですが、たまたま黒板ペイントが売っていたので、これも塗るところからやろうっていう感じで決めました。ただ、最初はあまりにもシンプルすぎたので、一から塗り直して、絵を描き足したりもしました。

── 作り直しすることは多いのですか。

たかぎ ある意味、行き当たりばったりでやっているところもあるので、作っている時に、この方向ではダメだ、となって材料を無駄にしたり、これはもう一回作ろうってなったものはあります。最近はネットで検索するといろんな方が作り方をアップしてくれてて、とても参考になるのですが、人によって作り方もそれぞれなので、どのやり方がいいのかよくわからなくなって、最終的には自分流に勝手にアレンジしたりして、それで成功したり失敗したりもありました。

── 手づくり≠ノ対する思い、というのはありますか。

たかぎ 上手にできた時、思ったよりかわいく出来た時はうれしいですね。あとは人に褒められた時とか「もしかしてそれ作ったの?」って言われた時も。手作りが本当に大好きな人って作ってるのが幸せ≠ニ言ってたりしますが、どちらかというと私はもっと実用的な感じで、「こういうのが欲しい」と必要に迫られて作ることが多いです。あとはリサイクルが割と好きなので「何かに使えないかな」って家にいっぱいとってあるものを使いたいと考えています。「風呂敷」や「封筒」などがそうですね。私は物を捨てることと買うことがあんまり得意じゃないんです。物を捨てる時はいつも罪悪感があって、物を買う時は迷いすぎて優柔不断で買えない。「黒板」も欲しいと思いつつ、なかなか買えなかったんですよ。サイズなどで決め手に欠けるというか。だったら自分で、納得のいく物を作ろうと。最近では買った方が安い物がたくさんありますが「シューズ袋」でも「棚」でも「クリームソーダ」でも、すべて自分の好みに微調整できるところが手づくりの一番いいところではないでしょうか。

── 書籍化にあたって「額づくりの巻」と「梅干しづくりの巻」を描き下ろされました。

たかぎ 連載の時は見開き2ページでまとめなくてはいけなかったのと季節感も考えなくてはいけなかったので、ある程度描けるものが限られていたんですが、最後の描き下ろしは本当に「今、作りたい」と思っているものを作りました。でも「梅干し」は、締切が迫っているのにあと一ヶ月漬けなくてはいけない上に、晴れの日じゃないと干せないなど、結構緊張感がありました。結果としては、梅雨が少し早く明けたので助かりましたが。

── 「手づくり」を含めて、今後の目標やご予定は。

たかぎ 手づくりに関しては、全然スキルがアップしていないので、もっとちゃんと習いに行くとか、テーマをもう一回ちゃんと設定してやってもいいかもしれません。「へなちょこ手づくり生活」も、手づくりが上手い人から見たら、どうかなと思いますが、温かい目で見てもらえればいいかな、と。もし、小さい子がいたら、一緒にクリームソーダを作ったら楽しいんじゃないかなとか、学校の宿題の工作で役に立ったらいいな、と思います。読者の方々が自分なりの手づくりライフを楽しんでみてください、という感じですね。本の刊行では「マラソンシリーズ」の続編が、多分、次に出る予定です。楽しみにしていてください。

※1 コピック:イラストを着色するときのカラーマーカー

(十一月十五日、東京都千代田区・白泉社にて収録)